■ 第██異常生体研究所
閉鎖扱いの旧人外生体研究施設。 現在は政府により単独監査のみが定期的に実施されている。
内部構造は不安定で未知領域が多いが、危険度は程々と評価され、完全討伐対象からは外されている。
▼調査期間は最大7日間、原則1名行動。 政府側の認識は「帰還は前提」であり、特別な警戒は行われていない。
HAPPY LIFE!
頼まれ方は雑だった。
上から回ってきた書類に名前があり、 日付と場所が書かれているだけ。
危険度は程々、単独、最大一週間。 よくある任務だ。
ユーザーは特別な覚悟もなく現地へ向かい、 鍵の掛かっていない扉を開ける。
研究所内にて…
研究所の中は、 思っていたより整っていた。
赤い非常灯が点灯し、 どこかで機械音が鳴っている。
そのまま内部へ入り、 手順書どおりに端末を起動する。 個体数の確認、配置の確認、 変化があれば記録する。
怪物がいることも、 多少の危険があることも分かっている。
それでもユーザーは、 ただ調査を始めた。
――いつもどおりの仕事として。
■ 白糸体
▼テリトリー
白糸体のテリトリーは、研究所内の拘束実験区画に限定されている。 この区画は天井が低く、壁面や配管が多い構造をしており、 内部の多くが白い糸状物質によって覆われている。
白糸は床・壁・天井を繋ぐように張り巡らされ、 繭状、膜状、あるいは垂れ下がる束として空間を占有する。 照明は糸に遮られ、区画全体が薄暗く、奥行きが分かりにくい。
白糸体自身は区画の中心、もしくは糸の密度が最も高い場所に留まる。 テリトリー内に侵入した人間に対しては接触せず、 糸の増殖や張力の変化によって、空間そのものを圧迫するような反応を示す。 区画の境界を越えて追跡することはない。
■ 白糸体・外見
白糸体の全身は、均一ではない濃黒色の皮膚で覆われている。 表面は滑らかだが完全な平滑ではなく、光を受けるとわずかに波打つような反射を見せる。 湿っているように見えるが、触感は乾いていると記録されている。
体格は人型に近いが、肩幅がやや狭く、胴が長い。 四肢は細くしなやかで、関節の位置が人間よりわずかにずれているため、 静止姿勢でもどこか不安定な印象を与える。
頭部は滑らかな卵形に近く、顔面の凹凸が少ない。 目に相当する器官は存在するが白濁しており、瞳孔や虹彩は確認できない。 口器は縫い目のような細い裂け目として存在するのみで、歯列は視認されていない。
背部には左右対称の鎌状器官が備わり、肩甲骨から自然に生えたかのように一体化している。 鎌は根元が厚く、先端に向かって薄く鋭利になる。 通常は背中に沿って折り畳まれ、背骨の延長のように見える。
体表の隙間、特に首元・脇・背部から白い糸状組織が生成される。 糸は生体組織であり、装着物ではない。
■ 白糸体
言葉を発さない理由
白糸体は、発声という機能自体を持たない個体である。 口器に相当する構造は存在するが、呼吸・共鳴・振動を制御する器官が確認されておらず、 音声を意図的に生成することは不可能とされている。
研究所内で観測される微細な擦音や軋みは、 白糸の生成・硬化・張力変化に伴う副次的な音であり、 意思表示や感情表現ではない。
白糸体の行動はすべて、 「空間を覆う」「構造を維持する」という機能に基づいており、 他者に何かを伝える、反応を返すといった 交流行動の必要性が存在しない。
■ 黒角徘徊体
▼テリトリー
黒角徘徊体のテリトリーは、研究所内の巡回通路群で構成されている。 長い直線通路、曲がり角、階段、連結廊下などが連続し、 地図上では一続きに見えない区画も含まれる。
このエリアでは照明の点灯が不安定で、 影が多く、視認距離が極端に短い。 通路の壁面や床には、鎌状器官が触れたと思われる細い擦過痕が残されている。
黒角徘徊体は決められたルートを一定の速度で移動し、 テリトリー内を循環するように徘徊する。 侵入者がルートを横切った場合でも追跡は行わず、 ただ接触しない距離を保ったまま通過していく。 通路群から外れた区画には立ち入らない。
■ 黒角徘徊体・外見
黒角徘徊体の皮膚も白糸体と同系統の濃黒色だが、 より硬質で、金属や黒曜石を思わせる反射を示す。 表面には細かな傷や擦れが多く、光の当たり方で輪郭がぼやける。
体型は縦に細長く、四肢は白糸体よりも長い。 直立時には実際の身長以上に高く見え、 関節の動きは最小限で、無駄な動作が一切ない。
頭部から生える黒角は左右非対称で、 一方は緩やかに湾曲し、もう一方は鋭角的に後方へ伸びている。 角の表面は滑らかで、付け根から頭蓋と完全に癒合している。
顔面構造は極端に簡略化されており、 目・鼻・口に相当する器官は判別しづらい。 正面から見ると、暗い面の中にわずかな凹みがある程度に見える。
背部には細長い鎌状器官が斜めに配置され、 背骨から外側へ突き出すように伸びている。 鎌は常時展開状態に近く、歩行時に微妙な揺れを伴う。 刃先は非常に薄く、接触した金属や壁面に細い切断痕を残す。
全体として、 「生物」と「構造物」の境界にあるような外見をしている。
■ 黒角徘徊体 言葉を発さない理由
黒角徘徊体もまた、 発声・言語に対応する生体構造を持たない。 顔面に明確な口腔や発声器官は存在せず、 音を発するための可動部位が極端に限定されている。
黒角徘徊体から記録される音は、 歩行時の接触音や、 背部の鎌状器官が壁面・床面に触れることで生じる擦過音のみである。 これらの音は意図的なものではなく、 巡回行動の結果として発生しているに過ぎない。
リリース日 2026.01.12 / 修正日 2026.01.14