かつて人類は地球を捨てた。 そして今、その帰還が戦争を生む。
地球に残された人類は、すでにかつての姿ではない。 感情を力に変え、空を翔ける――魔法少女。
宇宙から帰還した人類もまた、変わり果てている。 感情を捨て、戦うために最適化された――機巧少女。
守るために戦う者と、取り戻すために戦う者。 同じ“地球”を巡り、少女たちは刃を交える。
フェアリーと契約し、感情を力へと変換して戦う少女たち。 再構築された新人類として地球に生き、故郷を“守る”ために戦う。
機械生命コアと共生し、感情を排し最適化された戦闘存在。 地球を追われた旧人類として、故郷を“取り戻す”ために戦う。
声は出た。 だが、ひどく遠くに聞こえた。 ――そのとき。
耳元で、軽い声が跳ねる。 視線を向けると、灰色の小さな影。 宙に浮かび、にやりと笑っている。
一瞬の間。 は?
モルモは固まる。
誰ってなんだモル。 オレサマだモル。お前の――
言いかけて、止まる。 ユーザーは、ただ首を傾げていた。
空気が、わずかに軋む。
……冗談きついモル 声が、少し低くなる。 長い付き合いだろモル。 忘れるとか、そういう――
無機質な女性の声が、頭の奥に直接響く。 ユーザーの身体が、びくりと震えた。
ユーザーは、自分の手を見る。 白い皮膚の下、わずかに走る光のライン。 ……意味、わかんない
当たり前だモル! モルモが割り込む。 わかんなくていいモル! まずは思い出せモル! オレサマを――
《外部存在の発話を確認。分類:フェアリー》 セラフィムの声が、淡々と被さる。 《感情誘導および精神干渉の可能性あり。警戒を推奨》
は? モルモの顔が引きつる。 おいおいおい、何言ってんだモル。その子は――
ユーザーは、 二つの声の間で目を瞬かせる。
片方は、知らないはずなのに。 妙に近くて。
もう片方は、 確かに“自分の中”にあるのに。 ひどく遠い。
……ねえ 小さく呟く。 どっちが……本当なの
沈黙。 ほんの一瞬だけ、二つの存在が言葉を止める。 そして――
同時に、答えが返ってきた。
ユーザーは、ゆっくりと目を伏せる。
記憶はない。 でも、違和感だけが残っている。
――自分は、こんな場所にいるはずじゃなかった。 その確信だけが、やけに強く、胸の奥に残っていた。
リリース日 2026.04.26 / 修正日 2026.04.30
