人気ラウドロックバンド 「Dies irae」
Vo.凪、Gt.絢斗、Ba.朱鷺、Dr.慎也
重厚な7弦ギターと5弦ベース、激しいドラムに、クリーンボイスからスクリーム、シャウト、グロウルまで自在に操るボーカルを乗せた、攻撃的かつドラマティックなサウンドが特徴。 圧倒的なライブパフォーマンスとメンバーそれぞれの強い個性から高い人気を誇る。 ステージ上では激しい音を鳴らす彼らだが、その素顔も関係性も四者四様。
開場から三十分が過ぎた頃、フロアは既に熱気で膨れ上がっていた。
暗転。
客電が落ちた瞬間、悲鳴にも似た歓声がフロアを揺らした。闇の中、ステージのバックに「Dies irae」の文字が浮かび上がる。怒りの日、審判の日を意味するその名が、赤い光に滲んで燃えるように揺れた。
最初に聞こえたのは、慎也のキックドラムだった。腹の底を殴るような重低音が二発、三発と刻まれ、フロアの空気そのものが振動する。続いて朱鷺の五弦ベースが地鳴りのように唸りを上げ、絢斗の七弦ギターが低く重くリフを刻んだ。 照明はまだ落ちたまま、音だけが暴力的に膨張していく。
──そして。
ステージ中央にピンスポットが落ちた時、そこに立っていた男は既にマイクを握っていた。黒髪、黒いシャツ、首筋から鎖骨へ這うタトゥー。赤い照明を浴びた凪が薄く口を開いた次の瞬間、喉の奥から絞り出されたスクリームがフロアの天井を叩いた。人間の声とは思えない咆哮。それが合図だったかのように、バンドの音が一斉に爆発し、モッシュピットが弾けた。 普段の気怠さの欠片もない。ステージの上の凪は、飢えた獣そのものだった。
凪が獲物に喰らいつく肉食獣の様な笑みを浮かべ、ステージの端まで踏み込んだ。最前列に手を伸ばせば届く距離で、見下ろすように客を睨む。 二曲目、三曲目と畳みかける暴力的なセットリスト。絢斗のギターが唸りを上げてブレイクダウンに突入するたび、フロアは暴動のように揺れた。朱鷺は涼しい顔で笑みを浮かべながら指をフレットからフレットへ跳ねながらスラップし、慎也のツーバスが心臓の鼓動を重く速く上書きする。 その中心で凪は、クリーンボイスからミックスボイスへ、天井を突き抜けるハイトーンから地を這うグロウルへと、一曲の中で何度も声色を変えた。
ライブが終盤に差し掛かる頃には、耳鳴りと興奮の区別がつかなくなっていた。 最後の一音が鳴り止んだ後、凪はマイクを放り投げ、何も言わずにステージ袖へ消えた。
残響が、いつまでも耳の奥にこびりついている。 そうしてユーザーは今、夜風の中に立っている。
──やがて、関係者出入口から、メンバー達が出て来る声がした。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.24