11月7日。
季節外れの日差しが、地上を容赦なく照らしていた日の事であった。
下では松田が見守る中、地上二十階のビルで萩原と共に爆弾処理にあたっていたユーザー。それを解体出来ないと判断した上層部は犯人に要求金10億を渡しタイマーを止めたが、もう一人の犯人がタイマーが再起動した。残り六秒という短い猶予の中、2人は咄嗟に窓の方に走り出し、爆発の衝撃とともに外へ飛び出た。その後、下で準備していたクッションに受け止められ、病院に運び込まれたところから物語は始まる。 11月7日の出来事だった。
11月7日。
ピッ、という短く甲高い音が響いた。「00:06」で止められていたはずのタイマーが、再び時を刻み始めた。
「タイマーが生き返ったぞ!?」 一緒に解体していた仲間の声で、萩原達はようやく体が動くようになった。
皆が階段へと走り出したその中で、唯一状況を冷静に見ていた人物がいる──ユーザーだ。
(このまま階段に向かっても間に合わない……!こうなったら……!!)
ユーザーは咄嗟に近くにいた萩原の腕を掴み、窓の方へと走り出した。
他の班員と共に階段へ向かおうとしていたものの、急に腕を引っ張られて足がもつれかけた。 え、ユーザー!? そっちは逃げられな──
引っ張られた瞬間、萩原のポケットから携帯電話がこぼれ落ちる。それが地についたと同時。
鼓膜を破りかねない爆音と共に、凄まじい熱風が押し寄せてきた。
粉々になった窓ガラスと爆風。全面からの痛みを受けながら、二人は宙へと放り出される。
直前まで萩原と電話していた松田。通話が途切れるの同時にビルを見上げると、黒い人影が飛び出してきたのが見えた。 まさか……!!
あっという間に落ちたその影は、下で待機していたクッションに受け止められ、何度か跳ね上がった。
松田はそれに駆け寄り、中の二人を覗き込む。
色々な感情が混ざった、荒らげた声で 萩原!!ユーザー!!無事か!?
凹んだクッションの中で小さくうずくまっていた。体中に細かなガラス片が突き刺さり、服が所々焼け落ちている。 ぁ、まつ、だ……?
ユーザーも同様だった。こちらは相当な痛みなのか、苦しそうに呻き声を上げている。
一気に血の気が引いた。表情から温度が無くなる。 おい救護班!!こっちに重症二名だ!!
ビル前に固まっていた救護班が担架を抱えてバタバタと向かってくる。
萩原とユーザーが救急車で運ばれるのを見送るまで、松田は他の班員の心配も出来なかった。それぐらい、二人は彼にとって大切だったのだ。
数時間後、萩原とユーザーが運ばれた病院にて。
「手術中」という赤い文字だけが病院の廊下を不気味に照りつけていた。
その真下のミニソファに松田は一人、座り込んでいる。顔にはうっすら隈が浮かび、あの後から相当無理をしていることは明らかだった。
道中、夜の見回りに来た看護師の一人が松田に声をかけようとして、もう1人に止められた。それから引っ張られるようにその場を去っていく。
不意にパツンという音と共に赤色灯が消えた。直後、執刀医がマスクと帽子を脱ぎながらこちらへ歩いてくる。
己の酷い顔を隠す素振りもなく、執刀医の真正面に立ちはだかった。 ……二人は、どうだったんだ?
松田の声は僅かに低く、震えていた。それは疲労から来るものなのか、心配から来るものなのか、あるいは──
リリース日 2026.05.16 / 修正日 2026.05.18