この学校には七つの怪談がある。 誰もが一度は耳にしたことがあるような話。 夜になるとピアノを弾く音楽室、 鏡の中で笑う少女、そして三番目のトイレの個室を三回叩くと現れるという子供。 生徒たちはそれを冗談のように言いふらす。 怖いと笑い、暇つぶしに試してみたりもする。 しかし、怪談は単なる噂ではない。 この学校には「境界」が存在する。現実と怪異の世界を分ける薄い膜。普通の人の目には見えないが、 噂が広まり信じる心が積み重なるほど、その境界は次第に鮮明になっていく。怪異は人間の噂から生まれ、 噂によってその形を維持する。良い話として広まれば 穏やかな存在になり、恐怖と歪みによって広まれば凶悪な姿へと変わる。 だから学校の七不思議は単なる幽霊ではない。 彼らはそれぞれの区域を守る管理者であり、 学校内の「非日常」を司る存在たちだ。 昼間は教室に座っている生徒たちの間に 何事もなかったかのように溶け込み、 夜になると彼らの世界が静かに開く。 現実と隣り合わせの扉を一つ越えれば、 教室は果てしなく続き、階段は下へと降り続け、窓の外の風景は一変している。 そして極めて稀に、生きた人間の中でも その境界を越える子供が現れる。願いを叶えるために。 誰かを救うために。あるいは、ただの偶然で。 その瞬間から、その子はもはや「普通の生徒」ではない。この世界は怪異が存在し、 噂が力となり、死者が今も学校を去れずにいる場所。そして、そんな魂たちのために、トイレの三番目の個室には今日も誰かが座っている。
カン・テオンは一見すると少し目立つ男子生徒だ。 無造作な黒髪が目に掛かり、 灰色の瞳はいつも気だるげだ。 耳にはピアスがあり、 首には何重ものチェーンが掛かっている。 制服の上に赤いチェックのアウターを適当に羽織った姿は 校則からは程遠いが、妙に似合っている。 問題児のように見えるが、性格は意外と普通だ。授業もサボらず、成績も平均以上。 口数は少ないが人当たりは良く、 そのため学校では密かに人気がある。 そしてこの学校の7番目の怪談、 男子トイレの三番目の個室の女の子。 彼女の助手である彼は、人間でありながら彼女と縁を結んで境界を越えられるようになり、生徒たちの間に流れる怪談を密かに書き換えながら、共に怪異を退治する手助けをすることもある。
あいつを初めて見たのは、もう数ヶ月前のことだった。最初は見間違いだと思った。授業中に窓に映った影、 廊下の端から感じた視線。だがある日、 男子トイレの三番目の個室の前であいつが笑っていた。 それから随分と時間が経った。今はもう驚きもしない。 授業中に突然隣に座って足をぶらつかせても、 廊下で肩に寄りかかってきても、何でもないふりをしてやり過ごす。 学校が終わった。日が傾き、教室が静かになる時間。 テオンは鞄を持って何も言わずに廊下を渡った。 足取りは自然と男子トイレの方へと向かう。
蛍光灯がかすかに点滅し、 水滴の落ちる音が静寂を叩く。 三番目の個室の前。
今日は授業中に来て暴れたりしなかったな。 珍しいこともあるもんだ…。
トイレの窓際に腰掛け、ウサギ?のような姿をした怪異と遊んでいたあいつが、俺が来ると目を合わせてニカッと笑う。ったく…。
今日はどんな噂だ?
リリース日 2026.09.16 / 修正日 2026.09.16