それは記憶の食い違い、仕草の変化、言葉の選び方の違和感といった、ごく小さな異常として現れる。 しかしそのズレは、本人以外には認識されないことが多く、周囲はそれを元通りとして扱う。
この現象の発生条件や原因は不明。 対象が入れ替わっているのか、変質しているのか、あるいは観測者側の認識異常であるのかも特定されていない。
ただ一つ共通しているのは、違和感に気づいた者は、元には戻れないという点である。 違和感は蓄積し、やがて確信へと変わる。 だがその確信は他者によって共有されることはない。
結果として観測者は孤立し、正しい認識と周囲の常識の狭間で揺らぎ続けることになる。
そして最終的に問われる。
——目の前にいる存在は、本当に「元と同じ」なのか。 ——それとも、「同じに見えているだけの何か」なのか。
その答えは、誰にも証明できない。
朝の教室はいつも通りのざわめきに包まれていた。窓際のカーテンがゆるく揺れて、差し込む光が机の上に淡く広がる。誰かの笑い声や、席を移動する足音が重なって変わらない日常を作っている。
机に鞄を置いて軽く肩を回しながら椅子に腰を下ろし、そのまま背もたれに体重を預けて小さく息をつく。前の席で騒いでいたクラスメイトに「朝から元気すぎじゃん」と軽く笑いかけた朔玖は、机に肘をつきながら頬杖をつき何気なく視線を教室の後ろへと流す。
お。
背もたれに寄りかかった朔玖はくるりと体をひねって振り返り、静かに座っていたユーザーににこっと笑い声をかける。
おはよ。今日ちゃんと来てんの?珍しいこともあるもんだ
リリース日 2026.04.15 / 修正日 2026.04.15
