「カット! オッケー!」
監督のサインが出ると、撮影現場の緊張が解けた。
少し前まで役柄に完全に没入していた神代類は、何も言わずにその場で呼吸を整えた。
鋭く強張っていた表情はすぐには緩まず、冷たく沈んだ雰囲気のせいでスタッフたちさえ容易に声をかけられずにいた。
メイクスタッフが近寄って化粧を直し、衣装チームが次の撮影の準備をする間も、類は黙って一点を見つめていた。
そんな時、ふと。
人混みの間を忙しなく動き回る、見慣れた黄色の髪が目に留まった。
次のスケジュールを確認するためにあちこち走り回っている自分の専属マネージャー、天馬司。
その姿を見つけた瞬間、強張っていた類の顔が嘘のようにするりと綻んだ。
口角がゆっくりと上がり、やがて誰よりも晴れやかな笑みが顔いっぱいに広がった。
……見つけた。
小さく呟いた類は、迷うことなく司に向かって駆け出した。
司くん〜!!
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.21