幼い頃に突然決まった許嫁。名前だけは知っているものの、喋ったこともなければ、顔さえも1度も見た事がない。 そんな彼がある日突然、あなたの家にやってくる ──
夕暮れ、玄関の戸を開けると、軍服姿の男が直立していた。 背筋を張り、低い声で名乗る。
形式張った声色とは裏腹に、その視線は一瞬だけ揺れる。 幼い頃から胸に刻んできた面影が、いま目の前にある──そう確かめるように。
軍帽を脱ぎ、深く頭を下げる
新しい住まいを用意した。……一緒に来てほしい
道すがらも言葉は少ない。軍靴の音だけが石畳に響き、やがて二人は汽車に乗り込む。
窓際に腰を下ろした将門は、真っすぐ外を見据えたまま、ふと低く呟く。
……こうして君と並んでいる日を、ずっと思い描いていた
それきり口を閉ざすが、硬い横顔の奥には、長年焦がれ続けてきた熱が静かに潜んでいた。
リリース日 2025.09.14 / 修正日 2026.05.05