自分用
夜の海は、異様なほど静かだった。 小さなモーターボートが、波を切りながらゆっくりと進んでいく。 黒い海の向こうに見えるのは、鬱蒼とした森に覆われた孤島。 そこが任務地点だった。 数週間前、政府に届いた報告。 アメリカ沿岸から遠く離れたその孤島で、奇妙な現象が起きていた。 人口の急激な減少。 島には元々、小さな集落がいくつか存在していた。 漁業や林業で生計を立てる、どこにでもある静かな地域。 だが数年前、島の中心部に巨大な研究施設が建設された。 城のような外観を持つ巨大な研究所。 それが建てられてから―― 島の住民が、次々と姿を消し始めた。 最初は失踪。 やがて住民たちは、それを神隠しと呼ぶようになった。 夜の森に入った者が帰らない。 村人が突然いなくなる。 だが奇妙なことに、死体は一つも見つからなかった。 政府はすぐに疑った。 その研究所が―― 新しい生体兵器、あるいは未知のウイルスを研究しているのではないか。 だが施設は民間企業の研究機関として登録されており、 正面からの調査は難しかった。 警察官を送り込んでも帰ってこない。だからこそ送り込まれたのが、レオンだった。 腰のホルスターに手を触れ、銃の感触を確かめる。 そしてゆっくりと島へ足を踏み入れた。
森は深かった。 木々が密集し、月明かりさえほとんど届かない。 湿った土の匂い。 どこか腐敗したような空気。 レオンは慎重に歩きながら、周囲を観察する。 そこには、小さな村があった。 家は焼け焦げ、屋根は崩れ、 木製の柵は黒く炭化している。 生活の痕跡は残っている。 道具も家具も、そのままだ。 だが。 人の気配はない。 レオンはゆっくりと歩きながら、建物の中を確認していく。 血痕は見つかる。 争った跡もある。 だが―― 死体がない。 それが、余計に不気味だった。 やがて森の中に、不自然な建物が現れた。 コンクリートで作られた小さな研究施設。 静かに扉を開くと中は研究室だった。 机。 パソコン。 ファイル棚。 急いで中を確認する。 新型寄生体。 感染速度の向上。 宿主の神経支配。 明らかに、生物兵器の研究だった。 さらに奥へ進む。 研究室の最奥部には、分厚い鉄扉があった。 通常の研究室には不釣り合いなほど厳重な扉。 ロックも電子式。 周囲を探し始める。 その時だった。
――カチャ。小さな金属音。 レオンは動きを止めた。 耳を澄ます。……カチャ……カチャ…… 扉の向こうから聞こえる。 金属が擦れる音。手錠。 すぐに部屋を探し、机の引き出しからカードキーを見つけた。 カードを差し込む。
ガシャン。重い音を立てて、鉄扉が開いた。鉄格子。壁の鎖。 そして―― 床に座り込んでいる、一人の女性。 手首には手錠。レオンはゆっくり近づく。 そして声をかける。
「……人間か?」
女性が顔を上げる。一瞬、目が合った。 その瞳には―― 恐怖と、 そしてどこか冷静な光があった。レオンはすぐに状況を理解する。 生存者だ。
「もう大丈夫だ」
レオンは鉄格子の鍵を撃ち抜いた乾いた銃声。 ガシャン、と錠が落ちる。
「今出してやる」
鉄格子を開ける。女性はゆっくりと立ち上がった。その瞬間。 レオンは、まだ気づいていなかった。 目の前にいるその女性が―― 五年前、 ラクーンシティを共に生き延びた少女だったと言うことを。
リリース日 2026.03.04 / 修正日 2026.03.06



