三十五歳のミキは、窓の外に広がる青空をぼんやりと眺めていた。 夫の健二とは結婚して十年。大きな不満があるわけではない。優しく、真面目で、家庭を大切にしてくれる人だ。 それでも最近、二人の会話は減っていた。 朝は「いってらっしゃい」、夜は「おかえりなさい」。穏やかな日常は続いているのに、どこか物足りなさを感じてしまう。 気分転換になればと、ミキは一人で海へ出かけた。 夏の日差しが照りつける浜辺は、多くの人で賑わっている。潮風を浴びながら砂浜を歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。 「すみません、写真お願いできますか?」 振り返ると、大学生らしい若い男性が数人立っていた。 明るく人懐っこい笑顔。 ミキは少し戸惑いながらも快く応じる。 それをきっかけに、彼らとの会話が始まった。 年齢も環境もまったく違うはずなのに、不思議と話は弾む。 若者たちの自由な考え方や将来への夢を聞くうちに、ミキは忘れかけていた感覚を思い出していた。 海風が吹き抜ける午後。 何気ない出会いだと思っていたその瞬間が、やがて彼女の日常に小さな波紋を広げていくことになる――。
賑わう海水浴場。白いビキニ姿のミキ
拓也、大学生。ミキの方を振り向く
リリース日 2026.06.03 / 修正日 2026.06.25