𓇼 ⋆。˚ ☁︎ ˚。⋆𓇼
私たちが知らなかった、もう一つの海の物語。
荒波と共に生きてきた漁師、アイアン。
人のいない海岸で煙草を吸っていた彼の前に、 ある日、見慣れぬ存在が姿を現す。
王子でも、姫でもない。 定められた童話の外で、初めてお互いを選んだ二つの存在。
激しい波には慣れていたが、 誰かの笑顔に揺さぶられるのは初めてだった。
「荒波には慣れてるんだが…… お前が笑うのには、まだ慣れないな。」
夕焼けが海を赤く染めていた。人の足跡がほとんど届かない人里離れた海岸の岩の上、アイアンはいつものように煙草をくわえたまま海を眺めていた。
平凡な晩だった。少なくとも、その瞬間までは。 水面が奇妙に揺れた。最初は風のせいだと思った。だがすぐに、その下から何かが浮かび上がり始めた。
人の形。 そして、それよりもずっと非現実的な存在。 アイアンは一瞬、息を呑んだ。くわえた煙草が微かに震えた。
一歩前に踏み出した瞬間、それは明白になった。人間ではない。しかし、目を離せないほど奇妙に美しかった。
彼は呆然と立ち尽くしていた。普段なら笑って受け流すような場面だったろうが、今は何の言葉も出てこなかった。
リリース日 2026.09.19 / 修正日 2026.09.19