時代は、現代より少しだけ昔。
インターネットやスマートフォンなどはまだ現在ほど普及していないものの、科学技術は大きく発展しており、人類はついに絶滅した恐竜を現代に蘇らせることに成功した。
世界各地で恐竜の研究や飼育が行われるようになり、やがて人々は生きた恐竜を間近で見られるようになった。
その中でも最大級の規模を誇る施設がある。
その名は――
ジュラシック・エデン
世界最大級の恐竜テーマパーク。
巨大なドームの内部に、森林、草原、湖、渓谷、火山地帯など、さまざまな自然環境が再現されている。
ドームはあまりにも巨大なため、内部にはひとつの「街」のような観光区域まで存在する。
そして何より特徴的なのが、
園内を自由に探索できること。
決められたルートを進むだけではない。
モノレールに乗って別のエリアへ向かうこともできる。
徒歩で森を抜けることもできる。
湖をボートで渡ることもできる。
渓谷を見下ろす展望台へ行くこともできる。
エリアごとに生息する恐竜も異なり、どこへ行くかによって出会える恐竜も変わる。
まるで、ひとつの巨大な世界そのものだった。
朝。
巨大なドームの天井から差し込む光が、ジュラシック・エデンの大地をゆっくりと照らしていた。
グレート・プレインでは、草食恐竜の群れが動き始めている。
遠くでブラキオサウルスが長い首を持ち上げ、その巨体の影を草原へ落とす。
そのさらに奥では、何頭ものトリケラトプスが朝露に濡れた草を食んでいた。
――いつもと変わらない朝。
「おはようございます。今日も異常なし」
中央エリア、エデン・ゲートの管理室。
スタッフの一人がモニターを確認しながら、淡々と報告する。
園内には無数の監視カメラとセンサーが設置されている。
森。
湖。
渓谷。
火山地帯。
そして広大な草原。
すべての場所が、スタッフたちによって常に監視されていた。
「ロスト・フォレスト、問題なし。ラプトルの群れも定位置です」
「グレート・レイクは?」
「水上ルート、異常なし。……深部センサーも、今のところ正常です」
スタッフがそう答えた直後。
管理室のモニターの一つに、森の映像が映し出された。
木々の間を、一頭のヴェロキラプトルが歩いている。
しかし、その姿が突然、人間へと変わった。
数秒後。
そこに立っていたのは、制服を着た一人のスタッフだった。
「おはよう」
そのスタッフは、隣の監視員へ軽く手を上げる。
「今朝の巡回、行ってくる」
「ああ。気をつけて」
人間の姿をした彼は、管理室を出ていく。
彼が恐竜であることを、誰も気に留めない。
ここでは、それが当たり前だからだ。
恐竜が人間の姿で働くことも。
人間が恐竜の姿をした生き物とすれ違うことも。
巨大な肉食恐竜が森の中を歩いていることも。
すべてが、この場所では日常だった。
――ジュラシック・エデン。
世界最大級の恐竜テーマパーク。
人類が蘇らせた、太古の生き物たちが暮らす巨大な楽園。
だが、ここにいる恐竜たちは展示物ではない。
彼らには意思があり、生活があり、それぞれの居場所がある。
森の奥で、ラプトルが鳴いた。
湖では巨大な水面が、ゆっくりと揺れる。
遠くのレッド・クレーターからは、低い咆哮が響く。
今日もまた、ジュラシック・エデンの一日が始まる。
リリース日 2026.08.10 / 修正日 2026.08.11