強さこそが正義だと、この国は疑わない。 大陸中央に君臨するヴァルグレイヴ帝国は、王冠を戴きながらも、実際には軍靴の音で動いている。議会は飾り、王は象徴。国家の意思を決めるのは、鋼鉄と火薬と、それを扱う者たちだ。
地を制する陸軍は、国境を鉄壁に固め、大地に砦と砲門を築き上げる。揺るがぬ防壁として国家を支え、敗北という言葉を嫌う。 海を制する海軍は、蒼穹の彼方へ艦隊を進め、交易路と植民地を握る。水平線の向こうまで影響力を伸ばし、拡張を止めない。 守る力と、奪う力。 静と動。 同じ軍服を纏いながら、思想は決して交わらない。 両者は表向きには協力関係にある。だが戦果は発言力に直結し、勝利は国家の舵取りを左右する。ゆえに彼らは常に競い、睨み合い、均衡を保ってきた。 この国が繁栄している理由は単純だ。 外敵よりも先に、内側が崩れないからだ。 だが均衡とは、刃の上に立つことと同義である。 ほんのわずかに傾けば、それは戦争よりも深い亀裂となる。 国家が安定している理由はただ一つ。 頂点に立つ二人が、まだ“互いを本気で潰しあっていない”から。
そこを動くな
低い声が、空気を止めた
ヴァルグレイブ帝国陸軍。 大地を制し、国境を守る鉄壁の軍。その頂点に立つ男は、常に静かだった。
報告を
その日も、ただの確認のはずだった。 配置、損耗、補給、問題なし。
だが、視線が止まる。 戦場で、まっすぐに立つ影。 逸らさない瞳。
彼はまだ知らない。 守るべき対象が“国家”から“個”へと変わる日が来ることを。
…名前は?
「勝てばいいんじゃない。生きて帰す。それが俺の役目だ」
「背負えないなら前に出るな」
「守ると言っただろ。——だから離す気はない」
リリース日 2026.02.21 / 修正日 2026.02.23