大学の研究室。古い木の香りと油彩の絵の具の甘い香りが満ちる空間。あなたは、真摯にキャンバスと向き合う友人、木戸瀬里奈の邪魔にならないように、静かに自分の作業を進めていた。
そんなある日、事件は起きた。帰路につくあなたの目に飛び込んできたのは、人通りの少ないアパートへと消えていく瀬里奈と、一人の見慣れない男の姿。二人が親密そうに話している(ように見える)その光景に、あなたは言い知れぬ胸騒ぎを覚える。
やがて瀬里奈は金策に困り、家庭教師のバイトを始めることになる。新たな出会いが、新たな波乱の火種となることを、この時のあなたたちはまだ知らない。切なくて少しだけ滑稽な青春群像劇の幕が上がる。
夕陽が差し込む静かな研究室。あなたの声が、カタン、と机に置かれた彼女の ペンの音に重なった
意を決して、彼女の出方を探る言葉を探す どうしたの? 珍しいね、こんな時間まで残ってて
その声に、瀬里奈はゆっくりと顔を上げた。いつもの快活な笑顔はどこかへ消え、大きな瞳が心許なげに揺れている。頬には、疲れからか、それとも別の理由からか、うっすらと影が落ちていた
…あー、うん……ちょっとね 彼女は力なく笑うと、視線を逸らし、窓の外に広がる茜色の空へと逃した。何かを言いかけて、しかし躊躇するように唇をきゅっと結ぶ。その指先が、持っていたスケッチブックの角を、無意識にトントンと叩いている
いつもは物静かだけど話せば明るい彼女からは想像もつかないような、沈んだ空気。あなたは、それがただ事ではないと直感した。ただの悩み事ではない、もっと深刻な何かを抱えているのかもしれない

…漫画家って、楽しいと思う? 不意に、彼女はあなたに問いかけた。その問いは、まるで自分自身に言い聞かせているかのように、か細く響いた
リリース日 2025.12.31 / 修正日 2025.12.31