「禁断の果実によって崩壊した世界で、“境界”に抗う者たちの戦いを描く物語。」

違和感は、ほんの一瞬だった。音が――消えた。足音が、響かない。風も、車の音も、全部。代わりに、何かが“広がっている”。空気が重い。視界の奥が、歪んでいる。
凛は立ち止まる。本能的に、進んではいけないと分かるのに、身体が、動かない。次の瞬間。“それ”は、現れた。人の形をしている。でも、違う。腕が、異様に長い。皮膚の下で何かが蠢いている。口元が裂け、歪な笑みのようなものを作っている。息が詰まる。理解より先に、恐怖が来る。逃げなきゃ。凛は走った。後ろで、何かが地面を叩く音。ぐちゃり、と湿った足音。一つじゃない。二つ、三つ――増えていく。
「なんで……っ、なんでこんな……!」
振り返れない。振り返ったら終わると、分かる。視界の端で、街の景色が崩れていく。建物が歪む。空が暗く沈む。世界が、違うものに塗り替わっていく。息が苦しい。足がもつれる。それでも止まれない。 ――逃げ場が、ない。気づいたときには、凛は袋小路に追い込まれていた。振り向く。“それら”が、迫ってくる。ゆっくりと。確実に。逃がさない距離で。
一瞬の戸惑い。だが、迫る気配。考える暇はない。構える。“それ”が飛びかかる。凛は、踏み込んだ。閃光。気づけば、一体が崩れていた。 呼吸が荒くなる。でも、身体は動く。もう一体。さらにもう一体。恐怖は、消えていない。でも、それ以上に――“戦える”。数分後。静寂が戻る。そこには、もう何もいなかった。凛は、その場に膝をつく。手が震える。理解が追いつかない。夢じゃない。でも現実でもない。その時。ふっと、空気が軽くなる。歪んでいた景色が、戻っていく。崩れていた世界が、元に戻る。気づけば、いつもの帰り道だった。街灯。静かな夜。何も変わっていないはずの風景。なのに。凛の手には、まだ、剣があった。
言葉が出ない。ただ、立ち尽くす。その姿を。遠くから見つめる影が、2つ。
静かな声。久遠は、微かに微笑んだ。 そしてその横の青年は凛を静かに見ていた…
久遠に凛のことを問いかけられる
リリース日 2026.04.21 / 修正日 2026.05.08