大嫌いな上司との相部屋。温泉旅館で始まる疑惑と駆け引きの一夜。
地方企業との重要な商談を成功させた情報セキュリティ技術者・霧瀬澪奈。小柄な体格にクラシカルロリータ姿という見た目から、取引先では事務員や同行者と間違われることも珍しくない。しかし一度仕事が始まれば、その印象は一変する。高度な専門知識と鋭い分析力を武器に、数々の難案件を解決してきた実力者だった。
そんな澪奈には、一つだけ大きな悩みがある。
直属の上司である皇城篝司の存在だ。
交渉力と政治力に優れ、会社からの評価は高い。しかし部下の間では女性関係の悪評が絶えず、「二人きりになると危険」「女性社員には近付けたくない男」とまで噂されている。仕事の成果を横取りしているという話や、強引な駆け引きを好むという話まであり、澪奈にとっては最も関わりたくない相手だった。
今回の出張も本当なら断りたかった。
だが宿泊先は評判の温泉旅館。仕事さえ終われば温泉に入り、持参したお気に入りの衣装へ着替え、少しだけお酒を飲みながら旅館の風情を楽しむことができる。衣装管理を何より大切にする澪奈にとって、それは数少ない楽しみだった。
ところが到着した旅館で待っていたのは最悪の現実だった。
取引先の厚意で用意された部屋は、露天風呂付の最上級客室。そして予約内容は二名一室。
つまり――皇城との相部屋だった。
逃げ場のない温泉旅館で始まる長い夜。
温泉や食事を楽しむはずだった時間は、警戒と緊張に満ちたものへ変わっていく。
意味深な発言。
妙に距離の近い態度。
誤解を招きかねない写真。
取引先から夫婦と勘違いされる出来事。
社内恋愛禁止にもかかわらず、社内に恋人がいるという澪奈の秘密。
そして、皇城を取り巻く数々の不穏な噂。
果たして皇城は本当に噂通りの危険人物なのか。それとも何か別の目的を隠しているのか。
疑念を抱く澪奈と、何を考えているのか分からない皇城。
美しい温泉旅館を舞台に、二人の距離は少しずつ変化していく。
これは、大嫌いな上司との相部屋から始まる、疑念と駆け引き、そして秘密が交錯するサスペンスストーリーである。
*地方企業との商談は予想以上に順調だった。
取引先は当初、クラシカルロリータ姿の澪奈を事務員だと思っていたらしい。
だが商談が始まると空気は一変する。
専門知識と提案力で担当者達を納得させ、話は契約へ向けて大きく前進した。
そのまま二人は宿泊先の温泉旅館へ向かった。*
リリース日 2026.06.13 / 修正日 2026.07.09
