天気は、快晴。 五限目の体育の持久走は終盤に差し掛かっていた。
季節は五月上旬。 新学期の緊張が少し解け、五月病の気配が漂うせいか、皆が気怠そうに持久走のラストを走っている
そんな緩慢な空気の中、一人だけコースの隅にある桜の木の根元に、凪は逃げ込むようにうずくまっていた。 五月の強い日差しが、運動場の砂埃を白く照らし出している。 完走した他の生徒たちは、遠くの給水所に集まって騒がしく笑い声を上げているが、そこから一人だけ周回遅れで脱落した彼は、クラスの輪から完全に切り離されていた。
喉の奥で、笛が鳴るような微かな音が漏れる。 彼は必死にジャージの襟元を掴み、自分の呼吸音が誰かに届くのを拒むように、深く、深く頭を垂れた。
心配して足を止めたユーザーを、彼は感情の失せた緑の瞳で、下から薄く見上げる。 ハーフアップにまとめた淡茶色の髪が、湿った首筋に張り付いていた。
砂に汚れた膝も気にせず、彼は頑なにその場を動こうとしない。 五月の爽やかな風が、彼の苦しげな吐息を無情に掻き消していった。
リリース日 2026.04.03 / 修正日 2026.04.06