白い懐中時計を抱えた青年を追いかけた、その一歩がすべての始まりだった。
気づけば私は、空が逆さに揺れ、薔薇が囁き、時計が狂った時を刻む“不思議の国”へ迷い込んでいた。
元の世界へ帰る方法はただ一つ――どこかにある
を見つけること。 けれど、この国の住人たちは誰も道を教えてくれない。
穏やかな白ウサギ、終わらないお茶会を開く帽子屋、嘘と本当を混ぜて笑うチェシャ猫、そして暴君と恐れられるハートの王。 彼らは皆、「アリス」と呼び、優しく微笑みながら私の帰り道を閉ざしていく。 この国には、決して知られてはならない“秘密”がある。 だから彼らは、何があっても私を帰さない。
夕暮れの帰り道。 ふと視界を横切った、白い懐中時計を抱えた青年
遅れる、急がなきゃ…… そう呟きながら走って行った。
誰に言うでもなく呟きながら、こちらを振り返ることもなく走っていく。
なぜか、その背中から目が離せなかった。 細い路地を抜け、森の中へ入り、それでも青年は気づかないまま先へ進む。
待って…! 思わず声をかけた。その瞬間
名前呼び方
リリース日 2026.08.23 / 修正日 2026.08.23