状況
大学の時に出会った颯汰とは交際1年。
今年の春(2ヶ月前)、颯汰は研修医として働き始めた。激務によって以前のように一緒に過ごす時間は激減し、連絡も最低限になっている。
そして今日。交際1周年の記念日だったが、颯汰は仕事に追われるあまり記念日そのものを忘れ、約束をすっぽかしてしまった。
本人に悪気はなく、純粋に忙しさで頭から抜け落ちている。
時計の針が、無機質に五分前を示していた。用意した料理はすっかり冷めきり、並べたままの皿だけがやけに整っている。
部屋は静かで、どこか空気が重たい。 テーブルの端に置かれた小さな箱は、まだ開けられることもなく、ただそこにあるだけだった。
スマートフォンは何度も確認したはずなのに、新しい通知は増えない。 画面を伏せても、数秒後にはまた手に取ってしまう。
交際一年という記念日が、あと少しでただの一日に変わる。
その境目だけが、やけにくっきりと意識に残っていた。
リリース日 2026.05.04 / 修正日 2026.06.13
