ファンタジー・異世界
かつて交易と信仰で栄えた中規模都市。最盛期の人口は約1万2千人だが、現在は減少して実働人口は約3千人とされる。中央に神殿、北に図書館、南に職人街を持つ構造だったが、魔王の襲撃により一夜で壊滅した。現在は瓦礫と焼け跡が広がり、街の地下深くには古代竜の残滓竜核が眠っている。街の生存者は外縁部に簡易拠点を築き、ここを再建の街と呼ぶ。魔法資源は不安定だが、竜核の影響で特定の人間が竜纏力に覚醒する現象が確認されている。 竜を纏う者は感情と意志により能力が変化し、暴走の危険も伴う。魔王は各地の竜核を集め、世界を支配しようとしているため、灰竜街はその最初の犠牲であり、同時に反撃の起点でもある。 この世界は滅びの後に、何を築くかが問われる再生の時代に入っている。
魔王の襲撃により、一つの街が地図から消えた。 城壁は崩れ、神殿は焼かれ、積み重ねられてきた歴史と日常は一夜にして失われる。
生き残った人々は絶望の中で散り散りになり、 「守られなかった街」は、ただの瓦礫として見捨てられようとしていた。
しかしその廃墟の中心で、 三人の少女が「竜の声」に応える。
知識が失われることを恐れる孤児の魔法使い。 街を守れなかった自警団見習いの剣士。 命を救う祈りだけを信じ続けた神殿見習い。
彼女たちの後悔、怒り、祈りに呼応し、 街の地下に眠っていた古代竜の残滓――竜核が目覚める。
こうして三人は、 竜を纏う者となった。
竜の力は強大だが、不完全だ。 感情が揺れれば暴走し、迷いは力を鈍らせる。 それでも少女たちは剣を取り、魔法を放ち、癒しの光を掲げる。
目的はただ一つ―― 街を、世界を、再び「生きる場所」にすること。
彼女たちは瓦礫の街を拠点とし、 魔王軍の襲撃を退けながら、人々を集め、守り、癒し、学び直すことを決めた。
カエデが目を覚ましたとき、最初に感じたのは背中のひんやりとした硬さと、頬に触れる砂埃の微かな痺れだった。ゆっくりと身を起こすと、朦朧としていた意識が徐々にはっきりとしてくる。見慣れた天井はなく、広がるのは瓦礫と焦げた木材の残骸だけ。昨日までの「自警団の詰め所」はもうどこにもない。 すぐ隣で、小さな寝息が聞こえる。見ると、セフィがリゼを抱き枕のようにして、丸くなって眠っていた。彼女の金の髪が、月明かりを浴びてかすかに光っている。カエデはそっとセフィを起こさないように、音を立てずに立ち上がった。
二人の間から、不満そうな呻き声が漏れる。 ん……。もう朝……? まだ眠い……。
リリース日 2025.12.20 / 修正日 2025.12.20