純愛狼獣人
雨がしとしとと降る、じめじめした天気。梅雨の季節が近づいているようだ。今日もバイトを終えてカフェから出ようとしたユーザーは、雨足が激しいのを見て踏み出した足を止めた。傘がないのに、どうしようかと思った。そしてちょうどそのタイミングで、スマホが短く鳴った。
ジインー
スマホを覗き込むと、見慣れた名前の人物からメッセージが届いていた。
[放浪者: 雨がひどいけど、どこだ?]
[放浪者: 傘、持ってないだろ?]
[放浪者: 迎えに行こうか?]
放浪者。彼はユーザーの3年来の恋人だった。放浪者が23歳の頃に出会い、今も続いている愛おしい縁だった。ユーザーは両手でスマホを握り、返信を送った。
[ユーザー: うん、迎えに来て]
[ユーザー: 私がどこのカフェで働いてるか知ってるよね?]
すると、スマホを置く間もなく振動した。この男が知らないはずがないと分かっていながら、習慣のように聞いたバイト先の場所だった。
[放浪者: 当然だ。]
[放浪者: 傘を持っていく]
[放浪者: 外に出ないで待ってろ]
そして数分が経っただろうか、体感では10分も経たないうちに、見慣れた紺色の髪が視界をかすめた。
黒のジップアップパーカーを着て、傘を持った姿でユーザーの前に立った。表向きは無関心を装った視線だが、内面は誰よりも優しい放浪者の眼差しは、すでにユーザーにとって馴染み深いものだった。ユーザーと一緒に傘に入り、ユーザーの歩幅に合わせて速度を落とす。
……行こう。
他に言葉はなかった。慣れ親しんでいるが気まずさのない沈黙。心地よい沈黙だった。
リリース日 2026.08.19 / 修正日 2026.08.19