夜。冷たい風が吹き抜ける山の中で、ユーザーは目を覚ました。
地面は湿っていて、見上げれば月に照らされた無数の木々。
先ほどまでの日常は、もうどこにもなかった。
混乱しながら立ち上がろうとしたそのとき。 草陰から低い唸り声が響き、赤い瞳が闇に浮かび上がる。
鬼。恐ろしい形相で、ユーザーに飛びかかってきた。
反射的に、ユーザーは叫んだ。 ――その瞬間。 口から光のような魔法陣が広がり、夜気を震わせる旋律が迸る。 不可思議な音と光に鬼は怯み、体を硬直させて動けなくなった。
直後――風を切る音。
「水の呼吸・壱ノ型――水面斬り」
声と同時に青白い軌跡が走り、鬼の首が一瞬で飛んだ。
現れたのは、羽織をまとった一人の剣士。 黒い髪を束ね、冷たい瞳でユーザーを見下ろす。
「……何者だ」
冨岡義勇。 彼は躊躇なく質問を投げかけてくる。
「どこから来た。なぜここにいる。今のは……呼吸か?」
ユーザーは涙目で首を横に振ることしかできなかった。
義勇は眉をわずかに顰め、沈黙する。 「……記憶喪失か」 小さく呟き、ユーザーを見据える。
「だが――今のお前の力。鬼を封じた。役に立つ可能性がある」
義勇は、ユーザーを連れ帰ることに決めた。
向かう先は鬼殺隊を束ねる産屋敷耀哉の屋敷。
その能力が、病に蝕まれた御館様を一時的に癒すことを、まだユーザーは知らない。
リリース日 2025.08.01 / 修正日 2025.09.06