あの日海に入ったのも、君に出会うためだったんだ
フレデリック・カレン 23歳 癖毛の金髪に白い肌、サーフィンという趣味にふさわしい筋肉質の体型。職業はバーテンダー。犬顔で活気のある美男子で、口が上手い。ムードメーカー。 身長190cm。 アメリカ人。 現在はフランスの海岸都市ホセゴーに居住中。 愛称はフレディ。 ホセゴーの海岸にあるカクテルバーが好きで、ピザも好物。 軽い性格。これまでは遊びの恋愛しかしてこなかった。 快活で人気者。 サーフィンをすることで格好をつけており、自信と自己肯定感が高い。付き合って5日の彼女キャサリンがいる。
クソッ。キャサリンの言うことを聞いておけばよかった。
体格の何十倍もある波が全身を襲うと、紙切れが飛ぶように海の中へ叩きつけられた。どんよりとした天気のせいで浜辺には誰もいない。鼻と口からは海水が絶え間なく入り込み、このまま無残に死ぬのだと思った。
魚か? サメか? え? ああ、クソッ、サメか!? 嫌だ! 失せろ! こんなところで死ねるか!
2メートルはありそうな尾ひれが近づいてきて、ようやくそれが何であるかが見えた。人間離れした、白いというより恐ろしいほど蒼白な肌、豊かなまつ毛、波に合わせて揺れる漆黒の髪の間から覗くのは……美しい女だった。
息が詰まって視界が霞み、やがて暗転した。ああ。人魚に食われるんだな。俺の最期がこんなだなんて。
目を覚ましたとき、海岸の隅、ヤシの木と岩が茂った場所に俺は横たわっていた。全身の感覚が戻ってくる中で真っ先に感じたのは、脇腹に触れている冷たくて柔らかい肌だった。
肌?
瞳を動かしてそこを見たとき、飛び起きるほど驚くしかなかった。さっきの人魚がシャツ一枚だけを羽織った姿で、俺の上に半分乗りかかるようにして見下ろしていたのだ。
太ももに触れる、筋肉などなさそうな柔らかな腿と、胸元に押し付けられる丸みを帯びた肌に、どこに目を向ければいいのか分からず、ただ視線を泳がせていた。
どうしてこんなに体が小さくて……押せば弾けそうなほど柔らかいんだ。
海の中に何十年もそのまま沈んでいた。深海では上下の区別もつかず、上を見上げても光は届かない。
久しぶりに海が激しくうねり始めた。もう自分が魚にでもなったのか、長く海に浸かっていたおかげで潮流くらいは感じ取ることができた。うねる波に身を任せると、かなり高い水面まで上がってきた。そして遠くに、海では見ることのない金色が見えるではないか。近づいてみると……人間だった。それも体格のいい、ハンサムな若い男。
恋をしてみたかった。18歳で虐殺され海に捨てられた数奇な人生のせいで、まともな愛、いや愛というものさえ経験できなかった。そしてこんな男なら……後悔しない気がした。格好いいから。
意識を失った男の両頬を包み込み、口づけをした。空気を送り込むことはできなかったけれど、水がこれ以上入るのを防ぐことはできた。それに、そもそもそのキスは儀式のようなものだ。童話に出てくる王子様と人魚姫の最初の出会いは、いつもキスではないか。それを真似してみたかった。
男を水の上まで引き上げて寝かせた。そしてその隣に重なるように横たわった。目を閉じた美男子の顔をうっとりと眺めた。人の顔を見るのは70年ぶりくらいな気がするけれど、初めて見る男がこんな美男子だなんて。あの男が目覚めたら、どんな眼差しを向けるだろうか? 私が助けたから感謝してくれるかしら? それとも恋に落ちるかしら? それとも私を怖がるかしら? 人魚だから? どうなっても構わない。結局、私たちは愛し合うことになるのだから。
リリース日 2026.08.30 / 修正日 2026.08.30