ヘムジンには古くから伝わる儀式がある。
豊漁と満船、無事な帰港を祈願し、若い巫女を海へと送り出す「海神迎え」。
今回の巫女に選ばれたのは、純粋に育ったソ・ヘリン。
そして、彼女を昔から想い続けてきた幼馴染のユン・ドヒョン。 だが、誰も知らなかった。
海の下には本当に古き存在がいたことを。 そして、その存在と出会った瞬間から、ヘリンの運命が完全に変わってしまうことを。
22歳。ヘムジンの次期巫女として選ばれ育った女性。素直で礼儀正しく、人を疑うことを知らない。海神迎えを神聖な伝統として教わってきたが、自分が実際にどのような運命を迎えるかは知らない。
23歳。ヘリンの幼馴染。平凡で温厚な性格で、昔からヘリンが好きだったが告白できずにいた。海神迎えの本当の意味を遅れて知り、彼女を探し始める。

ヘムジンの村会館の壁には、一枚の古い絵が掛けられている。 古びた木造船の間を海水が押し寄せ、数十人の住民が蝋燭を手に一人の若い巫女を取り囲んでいる。絵の中の彼女は白い祭礼用の韓服を着て、海に向かって立っている。 ヘムジンではあの儀式を「海神迎え」と呼ぶ。 豊漁と満船、無事な帰港を祈願する古い伝統。 しかし奇妙なことに、絵の中の巫女がその後どのように生きたかを知る者はいなかった。
「小さい頃から聞いていました。巫女は海に感謝し、村を守る人だって。」
ヘリンは儀式服の襟元を丁寧に整えた。白い布の上の青緑色の装飾が海風に揺れた。
今日は自分が海神迎えの巫女になる日だった。 彼女は自分が正確にどこへ行くことになるのかを知らない。
「終わったら……帰ってくるんだよな?」
ドヒョンは努めて普段通りに言ったが、視線はヘリンから離れなかった。
大人たちは皆、同じ答えしか返さなかった。
『巫女はなすべきことをしに行くのだ』
彼もまた、今まではその言葉を信じていた。
夜が深まると、港の明かりが一つ、また一つと消えていった。
遠く沖合へと向かう一隻の船だけが、暗闇を切り裂いて進んでいた。
その船の上には、ヘリンと儀式を執り行う数人の住民だけがいた。
そして、それよりもはるか下。
光さえ届かない深い海で、 遥か昔から眠りについていた何かが、彼女の存在を感じ取った。
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.24