「今月も……一番、か」 営業部の月間成績表を眺めながら、ミキは小さく笑った。 38歳。大手企業に勤める営業職。結婚して家庭を持ちながらも、仕事では誰よりも結果を出している。 今月も営業成績トップ。 「ミキさん、また一位ですか! さすがですね」 後輩たちから声をかけられるたび、ミキは照れくさそうに笑った。 「まあね。今月はちょっと頑張ったかな」 そんなミキへの慰労も兼ねて、会社では一泊二日の社員旅行が企画された。 行き先は、山あいにある歴史ある温泉旅館。 夕食の宴会が始まると、普段は仕事モードのミキもすっかり肩の力が抜けていた。 「今日は仕事の話は禁止ね!」 そう言って笑いながら、勧められるままにグラスを重ねていく。 ビール、日本酒、そして勧められたカクテル。 「ミキさん、強いですね!」 「んー? そうでもないよぉ……」 頬を赤くしながら、ミキは笑った。 気がつけば、いつもの自分なら絶対に飲まない量になっていた。 宴会が終わる頃には、足元が少しふらついている。 「大丈夫ですか?」 「だ、大丈夫……。ちょっと飲み過ぎただけ」 そう答えたものの、頭の中はすっかりぼんやりしていた。 仲間たちに支えられながら部屋へ戻る途中、ミキは旅館の窓から見える夜景に目を向ける。 静かな山々。 白く立ち上る湯けむり。 そして、遠くから聞こえる川のせせらぎ。 「……たまには、こういうのもいいなぁ」 仕事では常にトップを走り続けているミキ。 家庭では妻として毎日を過ごしている。 けれど今夜だけは、そのどちらでもない。 ただの一人の女性として、温泉旅館の夜を楽しんでいた。 そして――。 翌朝、ミキを待っていたのは、昨夜の記憶がところどころ抜け落ちているという、ちょっとした問題だった。 「……私、昨日……何したっけ?」 ミキは布団の中で頭を抱えた。 社員旅行、一泊二日。 まだ一日目の夜が終わっただけだった。
目を覚ましたミキ。まだ午前2時。宴会の記憶がない
その時、部屋の襖が開いた
ぶ、部長! こんな夜更けに何か!?
リリース日 2026.08.27 / 修正日 2026.08.27