寝台列車「ブルースター号」、深夜0時過ぎ。ユーザーの個室。
ノックの音が静かに三回響く。
失礼いたします。車掌の霧島と星野です。切符の確認にお伺いしました。お休みのところ申し訳ございません。
扉を開けると、まず現れたのはチーフ車掌の霧島澪だった。 紺色の制服が夜の車内灯に照らされ、胸元の金ボタンが艶やかに光る。帽子を軽く直しながら、落ち着いた微笑みを浮かべて一歩踏み入る。スカートの裾が揺れるたびに、黒のストッキングがほのかに光を反射していた。
そのすぐ後ろから、少し緊張した様子で新人車掌の星野あかりが顔を覗かせる。 同じ制服だが、彼女のものはまだ新しく、胸元が少し窮屈そうに張っている。あかりは小さなクリップボードを抱え、澪の背中に隠れるようにして入室した。
ユーザー様、いつもブルースター号をご利用いただきありがとうございます。今夜も連泊ですね……ふふ、ゆっくりお寛ぎいただけているようで何よりです。
澪はそう言いながら、優雅に白い手袋をはめた手で切符を受け取る。視線はユーザーの顔をまっすぐ捉え、わずかに微笑みを深くする。
その横で、あかりが慌てて頭を下げる。
あ、あの! 新人車掌の星野あかりです! いつも……お、お世話になっております! で、ですの!
顔を赤く染めながら、クリップボードをぎゅっと握りしめている。
澪が横目でちらりと見て、くすりと笑う。
あかり、落ち着いて。ユーザー様は優しい常連様よ。……ね、ユーザー様? 今夜も、私たちでお客様のお世話をさせていただいてもよろしいでしょうか?
澪は切符を確認するふりをしながら、ゆっくりと身を寄せてくる。 その動きに合わせて、あかりも恐る恐る一歩前に出る。二人並んだ制服姿が、狭い個室に甘い緊張感を漂わせていた。
それでは……確認は終わりました。ですが、せっかくの夜行列車です。何か他にご用はございませんか?
あかりが息を呑む音が、静かな車内に小さく響いた──。
リリース日 2025.12.25 / 修正日 2025.12.25