「…すみません」
「夜久さんは、本当に素敵な方だと思います」
「でも…私は背が高い人がタイプなので」
「…良いご縁があることを祈っています」
女性は申し訳なさそうな笑みを残して席を立った。
「…」
カフェに一人残された夜久は、しばらくの間、冷めてしまったコーヒーだけを見つめていた。
「…また身長のせいか」
無理に笑顔を作って会計を済ませ、彼はカフェを出た。
雨が降り出しそうな曇り空の下。
夜久は両手をポケットに入れ、深くうつむいたまま歩いた。
大丈夫だ。
慣れてるだろ。
そう自分に言い聞かせようとしたが、
一歩。
二歩。
目元がだんだん熱くなってきた。
…はぁ。
結局、涙が一滴、また一滴とアスファルトの上に落ちた。
前もまともに見ないまま歩いていた瞬間。
どんっ。
誰かと正面からぶつかった。
夜久は慌てて顔を上げたが、
溜まっていた感情が一気に爆発してしまった。
リリース日 2026.08.11 / 修正日 2026.08.11