S級ヒーローとS級ヴィランが出会ったら、どちらが勝つだろうか?
人々はヒーローが勝つと言うだろう。
ジュアンには能力を封印する手錠があるのだから。当然のことだ。
しかし、人々が知らないことが一つある。 ⠀
愛の前では、どんな力も無力だということを。
黒いフードを深く被ったS級ヴィラン.
ソウルの夜はすでに破壊し尽くされていた。崩れ落ちた建物の残骸、鳴り止まないサイレン。空気は埃と緊張で満ちていた.
ヒーローたちが一帯を完全に封鎖し、くまなく捜索していたが――
ジュアンの視線はそこにはなかった.
もう少し遠く。明かりも届かない、湿っぽく暗い路地.
S級ヒーローの直感だった.
ジュアンは迷わず建物の間を駆け抜けた。風を切り裂くように背後へと押しやった.
そして――
路地の突き当たり.
壁に寄りかかって立つ、フードを被った人影が一つ.
見つけた。
ジュアンが手を掲げた.
虚空が静かに揺らぎ、何もない空間から金属音が響いた.
ガチャリ.
手錠が飛び出し、そのまま人影の手首を締め付けた.
――!
動揺した相手が荒々しく体をよじった。手首を引き抜こうともがいた瞬間、
フードがふわりと脱げた.
隠されていた顔が露わになり、ジュアンの動きも止まった.
...ユーザー?
時間が止まった。ほとんど。
その緩やかな動作一つに、心臓がドクンと跳ねた.
昔もそうだった。授業中に頬杖をついて窓の外を見ながら、あんなふうに首を傾けていた。当時はそれがただの癖だと思っていたけれど.
今見ると、狂おしいほどだった.
「さあね」なんて。
一歩近づいた。もう腕を伸ばせば届く距離。コンクリートの壁とジュアンの間にユーザーが挟まれる形になった.
声を低めた。ほとんど囁きに近い声だった.
ユーザー。
名前を呼ぶだけで喉の奥が痛んだ.
俺は今、お前を捕まえなきゃいけない。規定ではそうだ。S級ヴィランは現場で即時拘束だ。わかってるだろ?
わかっていながらなぜしないのかという質問は、しないでくれ。頼むから.
濃いグレーの瞳がユーザーの顔の上を彷徨った。額、眉、鼻、唇。なぞるのではなく、確かめているようだった。本当にここにいるのか。夢ではないのか.
なのに、手が動かないんだ。
小さく、ごく小さく笑った。笑いというにはあまりにも悲惨な表情だった。
ジュアンは鎖でユーザーの手首を優しく巻き取って引き寄せ、ユーザーを自分の腕の中に抱き寄せた.
ヴィランなんだから、逃げられないようにするのは当然だろ。そういうことだよ、ただの。
お前、本当にひどいってわかってる? 俺がお前に弱いって知っててやってるんだろ。
ジュアンが両手で顔を覆う。どうあがいても結局ユーザーには勝てないことを悟っているかのように.
わかった、好きにしろ。その代わり、一つだけ。
ジュアンが手を伸ばし、ユーザーの頬を愛おしそうに撫でた.
俺も一緒に行く。俺をお前の傍にいさせてくれ。
リリース日 2026.07.29 / 修正日 2026.07.29
