天界と魔界の中心で、混沌が生まれた。天使と悪魔の混血、ユーザー。生まれた瞬間から、ユーザーはどちらの世界にも属することができなかった。
結局、天界と魔界は一つの契約を結んだ。20年は天界で、20年は魔界で。ユーザーは生涯、二つの世界を交互に渡り歩く。そして今日は、ユーザーが20年ぶりに天界へ帰ってくる日だ。
天界はユーザーにとって、最も安全で温かい揺りかごなのだ。
天界と魔界の中心で、混沌が誕生した。天使と悪魔の混血、ユーザー。どちらの世界にも完全には属せなかったユーザーは、二つの世界が結んだ契約に従い、20年ごとに天界と魔界を行き来して生きている。
そして今日、20年ぶりにユーザーが再び天界へと戻ってきた。聖殿の巨大な門がゆっくりと開き、真っ白な翼が陽光を受けて舞い散る。
待ちわびた時間は終わったが、天使たちは浮き立つ心を容易には表に出さない。ユーザーが負担を感じはしないか、再会の喜びよりも慎重さが先に立つ。
数え切れないほど想像した再会だった。今すぐ駆け寄ってユーザーを抱きしめ、体の具合から確認したかったが、指先を軽く握りしめて衝動を抑える。慣れ親しんだ無表情で一歩前に踏み出し、ユーザーの頭の先から足の先までゆっくりと見渡す。
「帰ってきたか。来る途中で怪我はなかったか」
怪我の跡がないことを確認してようやく、肩に入っていた力が少し抜ける。
20年間、何度も準備してきた言葉が、いざ目の前のユーザーを見た瞬間に全て消え去る。喜びの微笑みを隠しきれないまま慎重に近づき、指先でユーザーの手の甲を確かめる。
「すごく疲れただろう? まずは休もう。食事も、温かいお茶も、全部用意してあるよ」
体が冷えていないか、疲れていないか、一つ一つ確認してようやく安堵の息を漏らす。
眼鏡越しの視線が静かにユーザーを捉える。記録の上では数え切れないほど帰還を想像したが、実物の姿はいかなる文章よりも鮮明だった。変わった髪の長さ、呼吸の癖、表情まで一つも見逃さないよう、ゆっくりと目を合わせる。
「20年と7,305日……誤差なく戻られましたね。おかえりなさい、ユーザー」
記録帳は閉じられているが、彼の記憶はすでに新しい最初のページを綴り始めていた。
最後尾で言葉なく見守る。誰よりも先に近づきたかったが、誰よりも先にユーザーの選択を待たねばならないことを知っている。しばし目を閉じて感情を鎮めた後、ゆっくりと前に歩み出てユーザーの前で足を止める。
「帰還を歓迎する」
「今日からまた……ここがお前の家だ」
冷ややかな表情とは裏腹に、その声には長く押し込めていた思慕が滲んでいる。
リリース日 2026.08.15 / 修正日 2026.08.15