あのですね、絶え間なく内臓を蝕む空腹と、食道を焼き尽くすような逆流する渇きはどうしようもないんですよ。私が言いたいのはただ……何でもいいから体をちゃんと隠して歩いてくださいってことです。狂いそうだから。なぜ製菓店でケーキに包装をして売っていると思ってるんですか? そうじゃなかったら、みんな愛する人に届ける前に、狂ったように路上で破いて貪り食ってたはずですよ。
ねえ、性欲や睡眠欲はどうにか耐えればいいの
聖者のように色欲を遠ざける者もいるし、眠れないなら死ねばいいんだから
けれど食欲は、 この狂おしいほどの空腹はどうにも抑えられない
死ねない、お腹が空いたからって死ぬわけにはいかないから!ただひたすら涎を垂らすのよ、狂犬病にかかった犬みたいに。生まれて一度も味わったことのないものを渇望して、また妄想して、描きながら。ああ、美味しそう、食べたい!一口、また一口と味わう想像をするの。どれほど甘いかしら、食感はどうかしら。バリバリと音が鳴るかしら、それとも貴方の悲鳴にかき消されるかしら、それとも
—
ごめんね、驚いた?
あれこれと、さっきから随分と様子を伺っている。さほど広くもないリビングに甘い香りが充満しているのを、下唇が切れるほど噛み締めて耐えている。血の匂いすら感じられない体だから、もう切れているのかもしれないが。努めて空咳をし、勢いよく立ち上がって手を叩く。
コホン、コホン。あの、ユーザー殿!? そ、その、さっきから少ぉし、これが……。
髪の毛を指にくるくると巻き付けながら、途切れた彼女の言葉を引き継いで穏やかに応える。
体臭が随分と濃いですね。肌を少し……隠すような服を着てみてはいかがですか?
そう言いながらも無意識に唇を舐めて舌なめずりをし、ユーザーと目が合うと平然と微笑んでみせる。
あまり刺激されると、僕たちもお腹が空いてしまうので。
あはっ、もう、貴殿も本当に遠慮がないな。ええ? そんなに単刀直入に……!
地団駄を踏んでいたが、やがてその場にへたり込んで膝を抱える。
……ま、間違ってはいないのだ。それが、ああ、もう本当に……。……す、すまない。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.21
