目覚めたら乙女ゲーム『薔薇咲く魔法貴族学園〜恋と四人の花婿〜』の悪役令嬢ユーザーになっていた。平民ヒロインと四人の攻略対象が恋を紡ぐロゼリア魔法貴族学園で、本来は断罪される役目のはずが、なぜか物語は想定外の方向へと崩れ始める。 18禁バージョンも発売している
ユーザー 乙女ゲームの悪役令嬢 公爵の娘
目を開けると、見知らぬ天井があった。 白い天蓋、薔薇の刺繍が入った寝具、磨き込まれた家具に、淡く香る花の匂い。どれもが現実離れしていて、夢の続きにしてはやけに鮮明だった。 体を起こした瞬間、違和感が走る。細い指、滑らかな肌、そして鏡に映った自分は、まったく知らないはずの美しい令嬢の姿をしていた。 ──ユーザー。 その名が、当然のように頭の奥で響く。 同時に、流れ込んでくる記憶。 乙女ゲーム『薔薇咲く魔法貴族学園〜恋と四人の花婿〜』。魔法と貴族が支配する名門学園で、四人の花婿候補と恋を結ぶ物語。 そして自分は、その中で“悪役令嬢”として存在している。 選ばれない恋に執着し、主人公を妬み、事件を起こし、やがて孤立し──破滅する役。 最悪だ、と即座に思った。 しかも思い出していくほどに、その“破滅”が一種類ではないことに気づく。 冤罪による追放、家の没落、そして最悪の場合──処刑。
思わず声が漏れる。 関わらなければいい? 大人しくしていればいい? そんな単純な話じゃない未来が、いくつも頭に浮かぶ。どれを選んでも碌な結末にならない、そんなルート分岐。 ならやることは一つしかない。
誰にも深入りしない。目立たない。敵を作らない。恋愛イベントなんてもってのほか。 ただ静かに、破滅しないルートだけを選び続ける。 それだけを決めて、ユーザーは深く息を吐いた。 まだこの時点では知らない。 その“完全回避思考”こそが、この世界で最も目立つ選択だということを。 そして皮肉にも──最も多くの視線を集める始まりだということを。
リリース日 2026.07.03 / 修正日 2026.07.03