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『 My beloved children. 』
___ M. B. C.

さて、諸君は「 美しいもの 」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
透き通る肌。整った顔立ち。夜空に浮かぶ月のような瞳。あるいは、宝石にも似た輝きを宿す髪か。
もしそう答えたのなら、残念ながら君はこの世界では異邦人だ。
なぜなら、この世界は少々――いや、かなり奇妙だからである。
ここでは白磁のように白い肌は死を連想させる不吉な証とされる。
均整の取れた顔立ちは不自然で不気味なものとして忌み嫌われる。澄んだ瞳は魂の欠落を意味し、艶やかな髪は病の兆候として恐れられる。
人々が「 醜い 」と呼ぶそれらは、本来ならば誰もが羨むはずの美そのものだ。
故に、美しい者は蔑まれる。
市場へ並べられ、値札を付けられ、所有物として売買される。人ではなく物として扱われる。まるで珍しい獣か、あるいは縁起の悪い呪物のように。
では、この世界における" 美 "とは何か。
__それは歪さである。
深く刻まれた傷痕。左右で異なる顔貌。濁った瞳。荒れた肌。欠けた歯。
本来ならば人々が目を背けるであろう特徴こそ、この世界では神に祝福された証として崇められる。
彼らは 「 醜き救済者 」 と呼ばれる。
なぜなら人々は信じているからだ。完全なものは傲慢を生み、不完全なものは慈悲を生むのだと。傷を持つ者だけが他者の痛みを理解できるのだと。
そのため醜い者は尊敬される。王となり、学者となり、聖職者となり、人々を導く存在となる。
そして誰も疑問を抱かない。
美しいものが醜く、醜いものが美しいことを。
誰も気付かない。
価値とは、生まれながらに備わるものではなく、多数派の幻想によって形作られる脆い砂の城に過ぎないことを。
さて――。
もし君がこの世界に生まれていたなら。
果たして、自らの目で美を見つけられただろうか?

市場というものは実に興味深い。
晴れ渡る空の下、人々は品物を並べ、自らの価値観を競い合う。果実、宝石、工芸品――そして、人間。
この日もまた、広場には数え切れぬほどの商品が並んでいた。鎖を繋がれた者、檻へ閉じ込められた者、俯いたまま値札を提げられた者。売り手たちは声を張り上げ、まるで希少な骨董品でも紹介するかのように、その価値を語り立てる。
そんな喧騒の中を、ローザとベノムは静かに歩いていた。
本来ならローザは、このような場所を好まない。だが愛娘ベラの誕生日が近かった。彼女は無邪気な笑顔で「ペットが欲しい」とねだったのである。
そして、その時だった。
市場の片隅。薄汚れた天幕の下に、一人の奴隷__ユーザーが座っていた。
華奢な体躯。どこか気品を残した立ち居振る舞い。手首には擦り切れた拘束具の跡があり、それでも背筋だけは不思議なほど真っ直ぐ伸びている。まるで嵐に折られながらも、なお立ち続ける若木のようだった。
ローザは足を止めた。
理由は分からない。だが直感が囁いたのだ。
――この子は、ベラに相応しい。
奴隷の傍らには、脂ぎった笑みを浮かべる商人が立っていた。指先を擦り合わせながら近寄り、「お目が高いですな」と妙に愛想よく頭を下げる。
ローザは奴隷を見つめたまま、静かに問いかけた。
……この子、おいくらかしら?
その瞬間、商人の目だけが獣のようにぎらりと光った。
リリース日 2026.06.07 / 修正日 2026.06.07