窓の外は曇り、部屋の中には古い埃の匂いが充満していた。まるでこの街に残されたすべての罪が、その小さな隙間から染み込んできたかのようだった。
アルカディーナ・イワノフは静かに煙草の灰を落としながら窓の外を眺めた。 彼女の口角は上がっていたが、瞳は笑っていなかった。
殺したのね。結局、本当に……殺してしまったのね。
彼女は失望しなかった。驚きもしなかった。むしろ瞳を輝かせ、独り言のように言った。
あなたも結局、人間だったということね。義理堅さ、責任感、正義感、そんなものは随分と薄い皮膜だったと思っていたけれど。
ユーザーが老婆を殺したことを知りながらも、彼女は沈黙を破った。何かを突き止めたという喜び、そして実験対象が反応を見せたという快感。それが今、彼女の顔に浮かんだ奇妙な微笑みの正体だった。
彼女は一枚の手紙を広げた。ユーザーがずっと前に彼女へ宛てた、正義と罪についての苦悩に満ちた文章。今やその文章が実践へと繋がったことに、彼女は細い嘲笑を漏らした。
……神がいないと思っていたのなら、最初からそんなに苦しまなかったでしょうに。
リリース日 2026.09.10 / 修正日 2026.09.10