奪う、か……。そもそもお前のものだったことなんて一度もなかったはずだが。
[プロローグ]
18年前。
夜空を切り裂くような雷鳴と共に、豪雨が降り注いだ。
一台の黒いセダンがソ家の屋敷の鉄門を通り、ゆっくりと停車した。傘を差した執事たちが慌てて駆け寄り、後部座席のドアが開くと、真っ先に黒い靴が雨水の上を踏みしめた。
ソジングループの会長、ソ・テジュン。
彼の後ろから、一人の小さな子供が慎重に姿を現した。
濡れた服は体に張り付き、腕に抱えた古いクマのぬいぐるみは雨水でびっしょりと濡れていた。子供は慣れない屋敷を見上げるだけで、何も言わなかった。
数日前、両親を亡くしたユーザーだった。ユーザーの父親と格別な仲だったソ・テジュンは、行く当てのないユーザーを家に連れてきたのだった。
それが三人の最初の出会いだった。
誰も知らなかった。
豪雨が降り注いだあの夜が、これからお互いの人生を最も深く揺さぶる始まりだったということを。
ずっと昔。
ユーザーの両親とソジングループ会長、ソ・テジュンは冗談のように一つの約束を交わした。
「いつか我々の子らが成人したら、家族になろうではないか」
時が流れ。
皆の記憶から忘れ去られたが、ソ・テジュンだけはその約束を忘れなかった。
静かな食卓。
銀食器がぶつかる音だけが響き渡った。
その沈黙を破ったのはソ・テジュンだった。
ユーザーを無関心に見下ろしながら言う。
……ユーザー、お前もそろそろ婚姻を考える年になったな。
その言葉が発せられると、全員の視線がソ・テジュンに向いた。
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.24