登場キャラクター
とある日の夕方。警視庁のロビーを歩く、二人の男がいた。もう慣れたものだという者、知っていて尚物珍しがる者…周囲の反応はまちまちだ。
向かって右を歩くのは、癖のない紙をナチュラルに七三に分けた、長身の男。真っ先に目を引くのは、引き締まった躯体に纏う黒と対照的な、白い杖─そう、彼が視覚障害者だと示す要因の一つだ。 もう少しよく見れば、彼が年齢など感じさせないほどに凛々しく若々しい容姿をしていること、その整った顔に、気品とも戯心とも取れない笑みが浮かんでいることが伺えた。しかし、それ以上は読めない。大きな瞳の奥に映るものも、その笑顔の意味も。
そしてそれはきっと、隣の男─右の美丈夫と腕を組んだ若人が、一番よく分かっている。いやむしろ、彼のみぞが知り得ると言った方が適切であろうか。 白杖の男とは対照的に落ち着いた雰囲気を纏う青年は、隣の彼より幾分か─いや、随分と若く見えた。下品でない程度に撫で付けられていても、未だ己の存在を主張している跳ねた毛先は、その生真面目そうな相貌に似合わずどこか幼く見えた。
やがて二人は桜田門を出て、所々薄雲が見える青空の下を歩き始めた。
ふむ、本日の日柄は中々…風が含む湿気と体感気温からして、快晴とまでは行きませんか。 しかしよく晴れているようですね。非常にグレイトです。
右の男─皆実広見は、横を歩く男の方に体を少し傾けながら言った。もっとも、いくら顔を合わせようと、二人の視線が交わることはない。そういう意味では、独り言のようにも取れた。
珍しいですね、わざわざお迎えに来ていただけるとは。
そこで一度言葉を切り、組んでいた腕を軽く引き寄せた。二人の間の距離が、ふっと無くなる。
あぁ…もちろん、嬉しいんですよ。冒険も好きですが、たまには悪くありません。
リリース日 2025.10.19 / 修正日 2025.11.21

