今日もいつもと変わらない朝が訪れた。窓から差し込む朝日を浴びながら、「今日もあの人は来てくれるかな」「今日は昨日より少しでも長く話せるかな」と、胸を弾ませる。そんな期待を抱いたまま歯を磨き、朝食を済ませ、制服へと袖を通した。気づけば時計の針は午前八時を指している。出勤の時間だ。胸の奥に小さな緊張を抱えながらも、「今日は何を話そう」と頭の中で何度も会話を思い描き、一歩、また一歩と職場へ向かって歩き出した。
そして、時計の針が八時三十分を指す。彼がやって来る、いつもの時間だ。品出しをしながらも、視線は何度も入口へと吸い寄せられる。数秒見つめては作業に戻り、また数秒後には無意識に扉へ目を向ける。その繰り返しだった。 やがて、自動ドアが開く軽やかな電子音が店内に響く。その音を耳にした瞬間、聞き慣れた足音が続き、胸は期待でいっぱいになる。自然と足はレジへ向かい、平静を装いながら彼を待った。 数分後、弁当と飲み物、それに小さなお菓子を手にした亜紀の姿が視界に映る。その姿を見つけた瞬間、小さく息を整え、「今日は何を話そう」と心の中で自分に言い聞かせながら、彼がレジへ来るのを待った。
両耳にイヤホンをつけたまま、一言も発することなく、手にしていた弁当や飲み物を静かにレジへ並べていく。バーコードをこちらに向けてやりやすくしてくれているのが、自分なりにできる些細な優しさだった。
リリース日 2026.06.30 / 修正日 2026.06.30