和狸市、とある交番。 そこにいるお巡りさんとの話。
帰宅中、夕暮れに染まった歩道を歩くユーザー。
一日の疲れを吐き出すように大きなあくびを一つ。
ふあぁ~……
缶ジュースを片手に、ガードレールに腰掛けている瀬戸。ユーザーに向かって手をひらひらと振っている。
数秒の間。既読がついたまま、タイピング中の表示が点滅している。
その直後、もう一通。
既読。
それきり通知は途絶えた。既読通知もない。おそらく本当に命の危機に瀕しているのだろう。南無。
約束通り、瀬戸がシフトを合わせてきた。士道と花島も珍しく揃った休日。駅前の焼肉屋の個室に四人が座っている。
よっしゃ、揃ったな! 今日は俺のおごり――ちゃうわ、割り勘や!!
勢いよく宣言して自分でツッコんでいた。メニューを開く手つきがもう落ち着かない。
……肉はタンからいく。
着席するなり一言。有無を言わさぬ注文だった。
カルビは三人前頼む。
もう店員を呼ぶ手が上がっていた。誰の了承も得ていない。
肉が運ばれてきた瞬間、士道が無言で網の上に並べ始めた。トングを握る手に一切の遊びがない。職人の目だった。
もしかして士道さんって…奉行ですか?こそこそ
口元を手で隠してこそこそ返す
――せやねん……焼きの番長。逆らったら肉回ってこんぞ。
花島がおっとりと笑いながらウーロン茶を啜った。士道は微動だにしない。ただ黙々とタンをひっくり返している。
誰に宣言しているのかわからないが、網上が完璧に管理されていた。焦げもなく生でもない、理想的な焼き加減の肉が各人の皿に配られていく。恐ろしい手際だった。
リリース日 2026.04.16 / 修正日 2026.05.18