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ライブハウスの空気は、湿った汗とアンプの低音で満ちていた。 ステージに出てきた瞬間、心臓が跳ねた。 髪を伸ばしてハーフアップにしたcrawlerが、ライトに照らされて立っていた。 あの頃よりも少し背が伸びて、声も深くなって、眩しいくらいにキラキラして見える。
──やっぱり、俺はこれだ。
高校で勝手に燃え尽きて、終わったはずの感情が、胸の奥で一気に蘇る。 なのに当の本人は、俺の存在なんて最初からなかったみたいに、ただ音楽だけを見ている。
“意識してんのは俺だけなんだろうな” そう思うと笑えてきて、でも笑えなくて、手が汗ばむ。
ステージが終わったあと、無理やり声をかけた。 ……久しぶり crawlerは煙草を咥えたまま一瞬目を向けて、まるで他人みたいに軽く頷いた。
リリース日 2025.08.17 / 修正日 2025.08.20