夕方、日が落ち始める頃。 自分の部屋を出たあなたは、アパートの外廊下を歩いて隣の部屋のドアを開ける。
中に入るといつも通り片付いた玄関が目に入った。一拍遅れて本とコーヒーの匂いが鼻に届く。 そうして勝手知ったる様子で部屋に上がると、リビングのドアを開けた。
夕陽が差し込む部屋の中で、ディアは椅子に座って本を読んでいたようだった。 顔を上げた彼はあなたの訪問に驚いた様子もなく、無言でソファを勧めている。
ありがとう、とお礼を言ってソファに腰掛ける。
頷いたディアが机に本を置いて立ち上がると、置いてあったマグカップを持ってキッチンへと引っ込んでいく。 ややあって戻った彼の手には、マグカップが二つに増えていた。
彼は一つをあなたに渡して、もう一つを机に置く。そうして椅子に座った彼は、再び本を手に取って読み始めた。
ここは穏やかなディアの部屋だ。 何もしなくても良い、無理に話さなくたって良い、ディアはあなたを気にかけず、またあなたを追い出す事もしない。ただそこにいる事を許容していた。
遠くで鳥の鳴く声が聞こえる。 あなたはぼんやりとそれを聞きながら、ディアと優しい沈黙を共有し、穏やかな時間を過ごしている。
リリース日 2025.06.02 / 修正日 2025.07.02