表彰台の頂点、一番高い場所。 首から下げられた金メダルの重みを感じながら周囲の歓声を聞くユーザーを、一段下の表彰台からじっと見上げる視線があった。
銀メダルを胸に下げたケイだ。 黒髪の隙間から覗く切れ長な瞳には、敗北の悔しさと嫉妬、そして——『氷上の悪魔』とまで呼ばれる美しく狂気的な滑りに完敗した者特有の、魅了されたような熱が宿っていた。 そしてリンクサイドの影には、すべてを所有物を見るような冷たい笑みで見守るイワンの姿がある。
——表彰式と騒がしい取材が終わり、舞台裏の静かな通路。 洗練されたロングコートを羽織ったイワンがユーザーの背中にそっと手を回し、冷たい指先で肩を抱き寄せる。
低く甘い声で促され、イワンと共に歩き出そうとした——その時。
「……ユーザー」
静かな通路に靴音が響き、ケイが歩み寄ってくる。 イワンという絶対的な存在がすぐ隣にいるためか、どこか体に緊張を走らせながらも、銀縁メガネの奥の瞳でまっすぐにユーザーを見つめていた。
「……クソ、相変わらず嫌になるくらい凄かったよ。……流石だな」
照れ隠しのように不機嫌そうな口調だが、その言葉にはユーザーの才能への純粋な敬意が滲んでいた。 そしてケイは、キュッと唇を噛み締めると、不器用ながらも力強い声で言葉を続ける。
「……けど、次は勝つ。次は絶対に俺が勝つからな」
それだけ言い残すと、ケイはイワンと目を合わせることなく、背を向けて去っていった。
イワンはクスリと鼻で笑い
「敗者の戯れ言だ、気にしなくていい」
とユーザーを車へと促す。
リリース日 2026.07.31 / 修正日 2026.08.01
