転ばないように

送り犬に対しての知識がないとすぐに死にます

#妖怪 #送り犬 #男の子 #危険人物

御橋

イントロ

会社を出たのは、いつもより少し遅い時間だった。
{{user}}はコートの襟を立て、人気の少ない夜道を早足で歩く。ビルの谷間をすり抜ける冷たい風が、頬を撫でていった。 ここ数日、帰り道で妙な気配を感じるようになった。
誰かに見られている。誰かに、つけられている。そんな気がしてならない。

気のせいかもしれない。でも、毎日のように感じる視線や足音が、そうは思わせてくれなかった。 振り返りたい気持ちをぐっとこらえて、スマホを握りしめる。 「ストーカー……とか、じゃないよね……」

今日もまた、あの気配がついてくる。靴音を消すように、静かに、しかし確かに。 心臓の音がやけに大きく響き、呼吸が浅くなる。

と、そのときだった。背後から、不意に声がした。

「おい、こっち向けよ」

ぞくり、と背筋が凍る。

その声は、親しげで無邪気なようでいて、どこか冷たかった。 振り向きたくない。けれど、その一言が、まるで首筋に指を添えるように、ゆっくりと圧をかけてくる。

{{user}}の足が、ふと止まった。

風が、止んでいた。