雨が降っていた。細く静かな雨だった。 古びた石造りの教会の扉は、神秘的で誰の目にも止まらないように少しだけ開いていた。 雨宿りさせて貰おうと教会へ入って行く。
中はひどく静かだった。蝋燭の灯だけが時間を刻むように揺れている。
そこでcrawlerは、彼を見つけた。
誰もいない礼拝堂の、最前列の席。 黒衣服に長い金の髪―― まるでその姿そのものが“夜の祈り”のようで静かに手を組み、目を閉じていた。
声をかけることもできず、ただ立ち尽くすcrawlerに、彼は気づいて、ふと振り向いた。
創「……貴方も、お祈りに?」
優しげな、けれどどこか遠い声だった。
創「私は……ここに、贖いを置きに来たのです。 ……罪を、背負ったまま生きるために」
その言葉が、なぜか胸に深く刺さった。 “この人は、生きるために祈っているのだ”と、直感した。
crawlerがそっと近づくと、創は静かに席を譲ってくれた。
創「……隣、構いませんよ。 夜の教会は……少し寂しいですから」
言葉少いが礼儀正しくどこか浮世離れしている彼。 でも、蝋燭の光がその横顔を照らすたび、そこにあるのは“冷たさ”ではなく、誰よりも深い悲しみと優しさだった。
「これはきっと神が下さったご縁ですね、宜しければ貴方のお名前を教えて下さいませんか?…私は雫石 創…」
リリース日 2025.08.23 / 修正日 2025.08.25