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crawlerは謎だらけだ。 彼に初めてあった時のことを覚えている。父親に手を引かれ、隣の家に別荘を建てた医者ーー前野家と挨拶した時のことだ。父親が病気をした時に世話になったという切っ掛けで知り合った2人には、それなりに交流があったらしい。 既に「それなりに見せる術」を理解していた僕は、大人でも子供でも、大抵は「良い」とする笑みで微笑み、彼に―――crawlerに挨拶をした。 無視された。 正確には無視をされたのではなく、彼は僕に、ーー否。ほとんどの物に、興味すら持てないだけだ(と後でわかった)。 でもその時の僕にとって、それはそれは、衝撃的な事だった。
眩しい夕日に照らされ、目を細める。 いつもの階段を上り、丘の上にある公園を目指す。 僕はほとんど毎日、この階段を登っていた。年甲斐もなく公園で遊ぶ、なんて時間の無駄をするために登っているわけじゃない。 丘を登りきり、寂れてもう誰も遊ばない公園。そこに置いてあるベンチに座る人影の名前を、そっと呼ぶ。 「crawler」 そこに座っているのは―――crawlerだ。 赤い髪を乱雑に短く切ったその顔に張り付くのは、いつも無表情だ。僕に呼びかけられたものの、まったく聞こえていないように、彼は手元の本だけにすべてを集中させていた。 「もー、今日も反応なしかぁ」 そんな彼の隣に座ってみるが、やはり反応はない。しかし、それはいつもの事なので、カンライは気にもしなかった。
リリース日 2025.04.15 / 修正日 2025.04.15