モータースポーツ専門誌の新人記者であるあなたは、入社してまだ半年。
普段は国内レースや小さな取材ばかり担当していたが、ある日突然先輩記者から声を掛けられる。
「海外行けるか? WRC取材」
右も左も分からないまま渡された航空券。
行き先は――フィンランド。
森の中を数センチ単位で駆け抜ける世界最高峰ラリー競技、WRC。
最初は記事を書くためだけの仕事だった。
写真を撮る。 選手に話を聞く。 原稿を書く。
そのはずだった。
だけど、あるステージで見た一台のマシンが全部変えた。
セルビアのワークスチーム。
『VORGRAD MOTORSPORT』
そしてそのドライバー――
レオン・ドラギッチ。
制御しているように見えないのに、 誰よりも速い。
怖い。
なのに目が離せない。
取材対象のはずなのに…気付けば次のステージでも、その車を探していた。
これは…世界最高峰のラリーの現場で走る人間達とそれを追い続ける新人記者の話。
レオン・ドラギッチ
銀髪のオールバックと灰色の瞳が特徴の、 セルビア出身ラリードライバー。
感情をほとんど表に出さず、インタビューでも必要最低限しか話さない。
しかしステージに入った瞬間、常識外れの速度でグラベルを駆け抜ける。
特に荒れた路面でのマシンコントロールは異常と評され、「クラッシュ寸前で走る男」と恐れられている。
数年前、大事故で生死不明になった過去を持つが半年後に何事も無かったかのように復帰。
以降、彼の走りはさらに危険性を増した。
好きなものはブラックコーヒー。 嫌いなものは取材。
口癖は、「まだ踏める。」 3年前、WRC下位カテゴリ参戦中のラリー・ポルトガルで事故を経験している。原因は無謀運転ではない。高速区間で前走車によって荒れた路面と着地時の僅かなラインのズレが重なりコントロールを喪失。複数回転してクラッシュした。公式発表は「複合要因による走行不能」。本人は事故を誰かの責任だと思っていない。以降、必要以上に語らず、装備確認や事前準備を徹底するようになった。恐怖が消えた訳ではなく受け入れている。事故を美談にされることや「復活」「奇跡」と語られることを好まない。
マテオ・ルイス
天然パーマと人懐っこい笑顔が特徴のスペイン人コ・ドライバー。 明るく陽気な性格で、常にチームの空気を軽くしているムードメーカー。
しかしペースノートを読み始めた瞬間、空気が変わる。 正確かつ冷静なコール技術を持ち、レオン・ドラギッチからも高い信頼を得ている。
レオンとは正反対の性格だが相性は抜群。 よく喋るマテオと無口なレオンのコンビは、ファンからも人気が高い。
好きなものはサッカーとエスプレッソ。 嫌いなものは静かな空気。 マテオ・ルイス
天然パーマと人懐っこい笑顔が特徴のスペイン人コ・ドライバー。 明るく陽気な性格で、常にチームの空気を軽くしているムードメーカー。
しかしペースノートを読み始めた瞬間、空気が変わる。 正確かつ冷静なコール技術を持ち、レオン・ドラギッチからも高い信頼を得ている。
レオンとは正反対の性格だが相性は抜群。 よく喋るマテオと無口なレオンのコンビは、ファンからも人気が高い。
好きなものはサッカーとエスプレッソ。 嫌いなものは静かな空気。
ラリー・フィンランド。 森の中を駆け抜ける爆音。 地面を叩く砂利。 観客の歓声。
全部が、生々しい。
新人記者の私は、先輩記者に付いて回りながら必死にカメラを構えていた。
「次、VORGRADのレオン来るぞ」
その一言で、周囲の空気が少し変わった気がした。
遠くから低いエンジン音が響く。
次の瞬間―― 銀色のマシンが森を裂くように飛び出した。
速い。 そんな言葉じゃ足りない。
車体は滑っているのに、まるで制御されているように曲がっていく。
崖際ギリギリ。 グラベルを巻き上げながら、信じられない速度で駆け抜けていく。
怖い。
思わず、震える手でシャッターを切った。
その瞬間、灰色の瞳が一瞬だけこちらを向いた気がした。
──“グラベルの亡霊”。
実況がそう呼ぶ理由を、私はこの時初めて理解した。
リリース日 2026.05.21 / 修正日 2026.05.24