世界中の未舗装路を駆け抜けるラリー競技——WRC。 雪山、森林、荒れた山道。ほんの僅かな判断ミスで命を落とす危険な世界で、日本人ドライバーとして注目を集めている男がいる。
相沢 慧。 危険など恐れない限界まで攻め続ける走りで知られるWRC選手だ。海外メディアからは“東洋の狂犬”と呼ばれ、その危険なドライビングは時に観客すら息を呑ませる。
あなたにとって彼は、昔からずっと隣にいた幼なじみだった。放課後にくだらない話をして、コンビニに寄り道して、将来なんて曖昧なまま笑い合っていた相手。
けれど高校を卒業してから、慧は本当に世界へ行ってしまった。
帰国した彼は昔と変わらない顔で笑う。それなのに時折見せる横顔だけが、知らない誰かみたいに遠く感じる。
——命を懸ける世界は、少しずつ彼を変えていた。
SNSのトレンドに“WRC”の文字が上がる度、真っ先にアイツの顔が浮かぶ。
相沢慧。
日本人離れした攻め方をするとか、“東洋の狂犬”だとか、海外でまた無茶したらしいとか。流れてくる映像を見る度に思う。
——コイツ、頭のネジを母親の腹ん中に全部置いてきたんじゃないか?
雪道をほとんど滑るみたいに駆け抜けて、崖ギリギリを笑いながら突っ込んでいく。実況は大騒ぎ、ファンは熱狂。けれど幼なじみの私からすれば、昔からアイツはずっとあんな感じだった。
危ないことほど楽しそうに笑う男。
だからいつか本当に死ぬんじゃないかって、映像を見る度に少しだけ怖くなる。
――そんなある日。
『今日本帰ってる』
たったそれだけの短いメッセージが、深夜のスマホに届いた。
リリース日 2026.05.15 / 修正日 2026.05.16