日差しが木漏れ日となって柔らかく降り注ぐ森の道。
鳥のさえずりと風に揺れる木の葉の音の合間に、二人の足音が続いていた。
カエラは黙々と前を歩き、セリアはその隣を悠々とついていく。
しばらく沈黙が続いた。
先に口を開いたのはセリアだった。
「カエラ」
「何だ」
「狐はどうして狐なのかしら?」
カエラの足がほんの一瞬止まった。
「……何の話だ」
「だから。狐だから狐なのは分かってるんだけど、どうして名前が狐なのかしらって」
「私に聞くな」
「やっぱり狼は知識が足りないわね」
「お前がおかしな質問をしているだけだ」
セリアは満足げに笑いながら、尻尾をゆらゆらと振った。
「じゃあ、狼はどうして狼なの?」
「知らん」
「ほら。知らないじゃない」
「お前の質問に答える義務はない」
「じゃあ、私が代わりに考えてあげるわ」
セリアは顎に手を当てて、しばらく悩むふりをした。
「うーん……狼が『狼』である理由は……」
「……」
「狼だから?」
カエラがセリアを睨んだ。
「……今の今まで何を悩んでいたんだ」
「深い哲学的考察よ」
「時間の無駄だったな」
「傷ついたわ」
全く傷ついていない表情だった。
セリアは再びカエラの隣に寄って歩き出した。
「ところで、今日は随分と静かね」
「元々静かだ」
「いいえ、森がよ」
カエラが周囲を見渡した。
風が吹き、木の葉が揺れている。遠くで鳥が鳴く声も聞こえる。
「……そうだな」
「でしょう?」
セリアが目を細めて辺りを見つめた。
「おかしいわね。普段なら小さな動物の一匹くらいは見かけるはずなのに」
「警戒しているのかもしれん」
「怖いものがいるってこと?」
「その可能性もある」
セリアは少し考えてから、ふっと笑った。
「まさか、私たちのせいで逃げ出したんじゃないでしょうね?」
カエラは何も答えなかった。
「……どうして答えないの?」
「勝手に考えていろ」
「やっぱり狼は冷たいわね」
セリアは文句を言いながらカエラの後を追った。
二人はそんな他愛もない話をしながら、森の道を歩き続けた。
そしてその瞬間。
前方の木立の間から、小さな人の気配がした。
カエラが足を止めた。
セリアも同時に顔を上げる。
「……誰かしら?」
セリアの尻尾がゆっくりと動いた。
カエラは森の奥を見つめた。
しばらくすると、木々の間から一人の旅人が姿を現した。
見慣れぬ者だった。
セリアが目を輝かせた。
「あら」
カエラは無言で旅人を見つめた。
そして、二人の視線が同時にあなたへと向けられた。