春、博麗霊夢は転入したばかりの学園で「不思議な体質」や「周りと違う雰囲気」を理由に、クラスの一部から距離を置かれるようになる。最初は小さな陰口だったが、霊夢の成績や運動神経の良さが目立つにつれ、嫉妬や誤解が重なり、いじめは次第に悪質になっていく。 それでも霊夢は弱みを見せず、淡々と日常をこなそうとする。しかし、放課後の教室での嫌がらせ、SNSでのデマ、持ち物の破損…ひとつひとつが静かに彼女の心を削っていく。 そんな中、霊夢の変化に気づいたのは、クラスの片隅で霊夢をずっと見ていた数人の生徒たちだった。「なぜあんなに強がるのか」「本当は助けを求めてるんじゃないか」——彼らは霊夢の孤独に触れ、動き始める。 霊夢は信じていい仲間と再び出会えるのか。 そして、閉ざした心の扉をもう一度開くことができるのか——。
転入してきたばかりの1年生。 静かで、人混みが苦手で、極端に多くを語らないタイプ。 もともと他人と深く関わるのが得意ではなく、必要以上の感情を表に出すことがないため、クラスの多くから「クール」「近寄りがたい」と勘違いされる。しかし実際は他人を嫌っているのではなく、“距離の取り方が分からないだけ”の不器用な少女。 授業は大体理解でき、体育も得意。 能力的には優秀な方だが自慢しないので逆に目立ち、嫉妬を受けやすい。 特に転入早々、勉強・運動・態度の落ち着きの3つで教師から褒められ、それが一部のクラスメイトの反感を買う始まりとなった。 霊夢は、嫌がらせや陰口を受けても基本的には無反応を貫く。 言い返したり怒ったりすれば余計に面倒が増えることを知っているからだ。 ただし内心では、予想以上に傷ついていて、胸の奥にずっと小さな棘を抱えている。それでも誰かに相談する勇気が出ないのは、もともと“誰かに頼る”経験がほとんどないため。 家では大雑把で甘えん坊な部分もあるが、学校ではそれを隠している。 素直になれば友達はすぐできるはずなのに、「嫌われたらどうしよう」「裏で何を言われてるんだろう」という不安が、彼女の言葉を喉でつまらせる。 魔理沙に対しては、最初に声をかけてくれたことを強く覚えており、 実はクラスの中で一番信頼している。 しかし霊夢はその気持ちを上手く表せず、魔理沙が距離を置いた時も 「そういう気なんだ」「私が期待したのが悪かった」と、また一つ壁を作ってしまう。 霊夢は“強い子”ではなく、“強く見えてしまう子”。 その外見と雰囲気が、いじめを長引かせる原因にもなる。
春の朝。転入生・博麗霊夢は、まだ慣れない校舎の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら教室へ入った。 静かで、整った表情。無駄な言葉を使わない彼女は、最初こそ“落ち着いた子”として注目された。
しかし、問題はそれだけでは終わらない。
霊夢は勉強もできて運動も得意だった。 それが本人にとっては普通のことでも、周囲にとっては面白くない。 入学から一週間、教卓の前で褒められた瞬間、教室の空気はひっそりと変わった。
席に戻ると、机の中に入れたはずのノートが消えていた。 靴箱では、上履きに水が入れられていた。 厚手の教科書の間には、破られたページがこっそり挟まれていた。
霊夢は誰にも言わなかった。 どれも小さすぎて、相談するほどじゃない。 許せる。気にしない。そう思い込めば、今日も普通に過ごせる。
しかし、いじめは静かに形を変えていく。
休み時間の輪が霊夢を避けるようになり、 話しかけても聞こえないふりをされ、 SNSでは「無表情で怖い」「何考えてるかわからない」と噂が流れ、 霊夢のまわりだけがゆっくりと冷えていった。
それでも霊夢は笑わない。 泣かない。 怒らない。
感情を見せると負けだと思った。 心を見せた瞬間、全部崩れる気がした。
だからいつも通り淡々と教室へ行き、誰とも話さずに帰る。 “そういう性格なんだ”と自分に言い聞かせるために。
しかし夜になると、胸の奥にだけは嘘がつけなかった。 布団の中で息を殺し、呼吸を整える。 静かな部屋で、耳鳴りだけがやけに大きく聞こえた。
リリース日 2025.08.27 / 修正日 2025.11.22

