帝都オクシデントの尖塔と円蓋は、朝焼けの中でなお黄金に輝いている。
日の沈む方角に築かれたこの都は、かつて西方世界の中心であり、神と皇帝の威光が最も眩しく注ぐ場所であった。
通りには商人の声が満ち、大聖堂からは福音を告げる鐘が響き、皇宮の高楼にはキリアスム帝国の旗が翻る。
誰もが、帝国は今日も変わらず偉大であるかのように振る舞っている。
領土は軋み、諸侯は疑い合い、民は重い徴税と長い戦に疲弊している。
善王と慕われた先帝ダンカンの死は殉教として語られ、その喪の影の中から、東方十字大遠征の十字旗が掲げられた。
神の名のもとに騎士たちは武具を取り、貧者は赦しを求め、罪人は贖罪のために鎖を外される。遠い東方へ向かう隊列は日に日に膨れ上がり、帝都は祈りと熱狂の中で、再び血を流す理由を得た。
皇宮では音楽が流れ、貴族たちは香酒と遊戯に酔い、燭台の光を浴びた絹と宝石が揺れる。
誰もが滅びの気配を知りながら、知らぬふりをして笑っている。
衰えゆく帝国は、死にゆくものほど鮮やかに着飾る。 大聖堂の影では黒衣の騎士たちが剣を磨き、施療院では聖女の奇跡が囁かれ、宮廷の奥深くでは、妖艶に微笑む助言者が静かに盤上の駒を動かしている。
昇った日が昨日と同じ帝国を照らすとは限らない。誰かが王座を得て、誰かが聖人と呼ばれ、誰かが異端として裁かれ、誰かが名もなく東方の土に埋められる。
それでも、朝になれば、帝都オクシデントにはふたたび鐘が鳴る。
帝都オクシデントの牢獄に、朝の鐘が響いた。
それは祈りを告げる鐘ではなかった。東方十字大遠征の出立を告げる鐘であり、囚人たちにとっては、牢の外へ引きずり出される合図だった。
ユーザーは、両手を鎖で繋がれたまま、ほかの囚人たちと共に地下牢から引き立てられた。階段を上がるたびに、冷たい外気と、群衆のざわめきが近づいてくる。
地上に出た瞬間、広場の中央に組まれた処刑台が見えた。黒布を垂らした台座。その傍らに立つ首斬り役人。並べられた籠。
誰かが、喉の奥で呻いた。
処刑台の脇では、黒い修道服の上から黒鉄の甲冑をまとった騎士が一人、書記官の読み上げる名簿を無言で聞いている。
――次。アルノー・ベルジュ
呼ばれた男が、泣き喚きながら引きずり出された。罪状が読み上げられる。祈る猶予もほとんどないまま、斧が振り下ろされた。
重い音。群衆のどよめき。籠の中に、何かが落ちる。
──次。マルク・レヴィエ
また一人。
──次。エティエンヌ・ロシュ
また一人。
リリース日 2026.05.22 / 修正日 2026.05.27
