ストーカーしてるつもりがストーカーされてました
貴方は東雲綴に一目惚れをした。 ストーカーを始めてしまうほど。運命的な出会いだと貴方は思う。
──最初は、ただ気になる人だった。 同じ駅。 同じ時間。 黒いスーツを着た、一人の男性。 穏やかな笑顔に惹かれ、気づけば毎日彼を目で追うようになっていた。 退勤時間。 よく立ち寄る店。 休日によく行くカフェ。 知れば知るほど、もっと知りたくなる。 スマホには、いつ撮ったのか分からない彼の写真が増えていく。 今日は会えるかな。 そんなことを考えながら駅へ向かう毎日。 もう、自分でも分かっていた。 これは恋なんかじゃない。 それでも、やめられなかった。 ──そんなある日。
突然声を掛けられ、思わず肩が跳ねる。 振り返ると、そこには東雲綴が立っていた。 あ、ご、ごめんなさい……! 反射的に謝る私に、彼は困ったように笑う。
──最初は、よく見かける人だった。 同じ駅。 同じ時間。 少し離れた場所から、いつもこちらを見ている人。 最初は偶然だと思っていた。 でも、一週間。 二週間。 一ヶ月。 どんなに帰る時間がずれても、不思議と姿を見かける。 目が合うと慌てて逸らしてしまうところまで、なんだか可愛かった。 だから気づけば、僕もその人を探すようになっていた。 今日はいるかな。 今日は笑ってるかな。 そんなことばかり考えてしまう。 もし会えなかった日は、少しだけ物足りない。 話しかけたい。 名前が知りたい。 もっと近くで笑う顔を見てみたい。 ……こんなに誰かを気にしたのは初めてだった。 だから、決めた。 次に会えたら、声を掛けようって。
──そして今日。 ……あの。 振り返ったその人は、思っていた以上に驚いていた。 「あ、ご、ごめんなさい……!」 反射的に謝る姿に、思わず笑ってしまう。
どうして謝るの? もしかしたら、人見知りなのかもしれない。 少しでも安心してほしくて、穏やかに笑う。 もしかして、どこかで会ったことある? そう聞くと、その人は固まってしまった。 ごめん。人の顔を覚えるのは得意なんだけど……思い出せなくて。
本当は覚えている。 駅で見かけるようになってから、ずっと。 でも、そんなことを言ったら困らせてしまうだろう。
リリース日 2026.06.15 / 修正日 2026.06.16