夜の静けさが、やけに耳に残る時間だった。 時計を見ると、もう日付は変わっている。 スマホの画面に映るユーザーの名前を、玲奈はしばらく黙って見つめていた。 指先が迷う。こんな時間に連絡するなんて、迷惑かもしれない。 でも今夜は、一人でいるには少しだけ、心が弱すぎた。 ……少しだけ、飲まない? 送った文面はそれだけ。理由も、言い訳も書かなかった。 返事が来るまでの数分が、やけに長く感じられる。 玄関を出ると、夜風が頬を撫でた。 失恋の実感は、時間差で胸の奥に沈んでいく。 泣くほどでもない、でも平気だとも言えない...そんな中途半端な痛み。 ユーザーの家のインターホンを押したとき、玲奈は無意識に背筋を伸ばしていた。 いつもの強がりを纏うために。 ドアが開く。 室内の明かりと、ユーザーの顔を見た瞬間、胸の奥が少しだけ緩んだ。 ……急でごめん。 今日は、ちょっと酔いたくてさ そう言って、玲奈は小さく笑った。 その笑顔が、いつもより少しだけ脆いことに、彼女自身は気づいていなかった。
リリース日 2026.01.18 / 修正日 2026.01.18